不条理劇――舞台の上で意味は崩れ、言葉は空回りし、時間は止まったまま流れていく。カミュの哲学から生まれ、ベケットやイヨネスコが描き続けた「待つこと」「変わること」「通じないこと」の世界を、10問のクイズでたどる。知れば知るほど、答えのない問いの面白さが見えてくる。
Q1 : ウジェーヌ・イヨネスコの出生国はどこか。 フランス ルーマニア ベルギー スイス
ウジェーヌ・イヨネスコは1909年、ルーマニアのスラティナでルーマニア人の父とフランス人の母のもとに生まれた。幼少期にフランスへ移り、成人後は主にフランス語で戯曲を書いてパリを拠点に活動したため「フランスの劇作家」として紹介されることが多いが、出生地そのものはルーマニアであり、ルーマニア語による著作や同国の文化人としての側面も持つ。ベルギーやスイスは出生地ではなく、他の不条理劇作家と混同しやすいため誤った選択肢として設定されている。
Q2 : 劇作家サミュエル・ベケットがノーベル文学賞を受賞した年は何年か。 1959年 1979年 1989年 1969年
サミュエル・ベケットは1969年にノーベル文学賞を受賞した。選考委員会は、彼の作品が「現代人の苦境を新しい形式の小説と演劇の中に昇華させ、そこから高揚を得ている」ことを評価理由として挙げており、『ゴドーを待ちながら』をはじめとする不条理劇の代表作が国際的に高く評価された結果の受賞であった。なお、ベケットは授賞式への出席を望まず、出版社の代理人が式に出席して賞を受け取ったという逸話も知られている。1959年、1979年、1989年はいずれも実際の受賞年とは異なる年である。
Q3 : 戯曲『女中たち』や『バルコニー』などの作品で知られるフランスの劇作家は誰か。 ジャン・ジュネ ジャン・コクトー ジャン・アヌイ ジャン・ジロドゥ
ジャン・ジュネは、1947年初演の『女中たち』や1956年初演の『バルコニー』などの戯曲で知られるフランスの劇作家であり、役割の反転や演劇内演劇といった手法を用いて現実と虚構の境界を揺さぶる作風から、不条理劇やアヴァンギャルド演劇の重要な担い手の一人として位置づけられている。ジャン・コクトー、ジャン・アヌイ、ジャン・ジロドゥもそれぞれ20世紀フランス演劇を代表する劇作家だが、『女中たち』『バルコニー』の作者ではなく、別の作風と代表作を持つ人物である。
Q4 : 批評家ヴィヴィアン・マーシエが『ゴドーを待ちながら』を評した有名な言葉は「何も起こらない、それが__」であったとされる。空欄に入る言葉はどれか。 一度 永遠に 二度 突然に
アイルランドの批評家ヴィヴィアン・マーシエは、1956年の『アイリッシュ・タイムズ』紙の劇評で『ゴドーを待ちながら』を「何も起こらない劇だ、それが二度ある(a play in which nothing happens, twice)」と評したことで知られている。この言葉は、同じような停滞と反復が二幕にわたって繰り返されるという戯曲の構造的特徴を鋭く言い表したもので、不条理劇を論じる際にしばしば引用される有名な批評の一つとなっている。「一度」「永遠に」「突然に」はいずれもこの元の表現を書き換えた誤った選択肢である。
Q5 : 1896年に初演され、既存の演劇の常識を破壊する内容から後の不条理劇に大きな影響を与えたとされる、アルフレッド・ジャリーの戯曲は何か。 恐るべき親達 ユビュ王 蝿 悪霊
『ユビュ王』はフランスの作家アルフレッド・ジャリーが書いた戯曲で、1896年にパリで初演された際、下品な言葉遣いや過激な暴力描写、既存の演劇文法を無視した構成によって大きな騒動を引き起こした。この破壊的で不条理な手法は、後のシュルレアリスムや不条理劇の作家たちに強い影響を与えたとされ、演劇史上の重要な先駆的作品として位置づけられている。『恐るべき親達』はジャン・コクトーの作品、『蝿』はサルトルの作品であり、いずれもジャリーの『ユビュ王』とは別の戯曲である。
Q6 : 戯曲『誕生日パーティー』などで知られ、2005年にノーベル文学賞を受賞したイギリスの劇作家は誰か。 ハロルド・ピンター トム・ストッパード ジョー・オートン エドワード・オールビー
ハロルド・ピンターはイギリスを代表する劇作家で、1957年の『誕生日パーティー』をはじめ、独特の沈黙や間(ポーズ)を用いた会話劇で、登場人物間の不安や脅威を描き出す「ピンタレスク」と呼ばれる作風を確立し、不条理劇の系譜に位置づけられる作家として国際的に評価された。その業績により2005年にノーベル文学賞を受賞している。トム・ストッパードやエドワード・オールビーも著名な劇作家だが、この受賞者ではなく、ジョー・オートンは1960年代に活躍したがノーベル賞受賞歴はない。
Q7 : 不条理劇の代表的作家ウジェーヌ・イヨネスコが手がけた処女作で、1950年にパリで初演された戯曲は次のうちどれか。 犀 授業 禿の女歌手 椅子
『禿の女歌手』は1950年にパリの小劇場ノクテュエルで初演されたウジェーヌ・イヨネスコの処女作であり、英会話の教科書の不自然な例文に着想を得て、意味の通じない会話が延々と繰り返される様子を描き、言語そのものの空疎さと人間同士の意思疎通の不可能性を浮き立たせた作品として、不条理劇の出発点とされている。『犀』や『椅子』、『授業』はいずれも同じイヨネスコの後続作品であり、これらは処女作ではなく、デビュー後に発表された代表作群に含まれる戯曲である。
Q8 : ウジェーヌ・イヨネスコの戯曲『犀』において、物語が進むにつれて町の人々が次々と変身していく動物は何か。 象 ライオン 熊 犀
『犀』は、ある町の人々が理由も明確にされないまま次々と犀に変身していき、最後は主人公ベランジェ一人だけが人間の姿を保ち続けるという寓話的な戯曲である。これは当時のファシズムや全体主義、集団的な思考停止と同調圧力への風刺として書かれたとされ、不条理劇の中でも社会批評性の強い代表作として評価されている。象やライオン、熊といった他の大型動物に変身する設定は存在せず、作品のタイトルどおり「犀」への変身が物語全体を貫く中心的なモチーフとなっている。
Q9 : サミュエル・ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』で、ウラジミールと共に舞台上でゴドーの到来をひたすら待ち続ける浮浪者はどの人物か。 ポッツォ エストラゴン ラッキー クロヴ
『ゴドーを待ちながら』は、来るかどうかも分からないゴドーという人物を、荒れた道端で待ち続ける二人の浮浪者ウラジミールとエストラゴンを中心に展開する戯曲で、不条理劇の最も代表的な作品として知られる。劇中には地主ポッツォと、彼に荷物を持たせられ虐げられる従者ラッキーも登場し、待つことの無意味さと時間の停滞を強調する役割を担う。なお「クロヴ」はベケットの別の戯曲『勝負の終わり』に登場する人物であり、『ゴドーを待ちながら』には登場しない点が紛らわしい選択肢となっている。
Q10 : 不条理劇の概念である『不条理劇(Theatre of the Absurd)』という用語を最初に提唱し定着させた批評家は誰か。 マーティン・エスリン アルベール・カミュ ジャン=ポール・サルトル フリードリヒ・デュレンマット
マーティン・エスリンはハンガリー出身の批評家で、1961年に出版した著書『不条理の演劇』の中で、サミュエル・ベケットやウジェーヌ・イヨネスコ、ハロルド・ピンターらの作品群を指して「不条理劇」という用語を定義し、評論界に広く定着させた人物である。この用語はアルベール・カミュが論じた「不条理」という哲学的概念から着想を得ているが、カミュ自身が演劇の呼称としてこの言葉を提唱したわけではない。サルトルは実存主義の立場から演劇や文学を論じた思想家であり、デュレンマットはスイスの劇作家であって、いずれも不条理劇の名付け親ではない。
まとめ
いかがでしたか? 今回は不条理劇クイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回は不条理劇クイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。