スマートフォンのカメラは、ただ画素数を競う時代からセンサーサイズやレンズ構造、AI処理まで多彩な技術が絡み合う分野へと進化してきた。写メールの誕生から現在のハイエンド機まで、進化の歴史や仕組みを知ることで、日々何気なく使っているカメラ機能の奥深さがきっと見えてくるはず。全10問のクイズに挑戦して、自分のカメラ知識を試してみよう。
Q1 : iPhoneのProモデルなどに2020年以降搭載されている、赤外線レーザーを周囲に照射して物体までの距離を高速かつ高精度に測定するセンサーは何と呼ばれるか。
「LiDARスキャナ」は、赤外線レーザーを対象物に照射し、反射して戻ってくるまでの時間から距離を測定するセンサーで、iPhone 12 Pro以降のProシリーズなどに搭載されている。カメラだけに頼る距離推定と比べて、暗い場所でも高速かつ高精度に周囲の奥行きを把握できるのが特徴で、これによりオートフォーカスの高速化や、暗所でのポートレートモードの精度向上、AR(拡張現実)アプリでの空間認識の高速化といった用途に活用されている。もともと自動運転車の障害物検知などにも使われてきた技術を、スマートフォンのカメラ機能向けに小型化して転用したものである。
Q2 : Xperia PRO-IやシャープAQUOS R6など、一部のハイエンドスマートフォンで採用され、一般的なスマホ用センサーより大幅に大きいことで話題となった撮像素子サイズはどれか。
一般的なスマートフォンのカメラには1/2.3インチや1/1.3インチ程度の小型のイメージセンサーが搭載されることが多いが、Xperia PRO-I(ソニー)やAQUOS R6(シャープ)は、コンパクトデジタルカメラの上位機種などに使われる「1インチ」タイプの大型センサーを搭載したことで注目を集めた。センサーが大きくなることで1画素あたりの受光量が増え、暗い場所での撮影やボケ味の表現力が向上する一方、大型センサーとレンズを薄いスマートフォン筐体に収める設計上の難しさから、カメラ部分の突起(出っ張り)が大きくなる傾向がある。なお、APS-Cやフルサイズはさらに大きなセンサー規格だが、2026年現在も市販スマートフォンへの搭載は一般的ではない。
Q3 : スマートフォンのカメラで、圧縮や自動補正といった画像処理をほとんど行わず、センサーが記録した情報をそのまま保存できるファイル形式は何か。
「RAW形式」は、イメージセンサーが受け取った光の情報を、カメラ内部での圧縮や色調補正、シャープネス処理などをほとんど行わずにそのまま記録するファイル形式である。JPEG形式のように撮影時点で圧縮・現像処理が施される形式と異なり、RAW形式は撮影後にパソコンやスマホの専用アプリで露出やホワイトバランス、階調などを柔軟に調整できるのが特徴で、写真編集の自由度が高い。その分ファイルサイズはJPEGに比べて大きくなりやすい。近年はiPhoneの「ProRAW」やAndroidの「Adobe DNG」対応など、スマートフォンでもRAW形式での撮影に対応する機種が増えている。
Q4 : スマートフォンの「ポートレートモード」が、人物にピントを合わせつつ背景を自然にぼかす処理を行う際に、主に利用している情報は何か。
ポートレートモードでは、複数のカメラやセンサーを使って被写体と背景それぞれまでのおおよその距離、すなわち「深度情報」を取得し、画像内の各部分がどれくらいカメラから離れているかを推定する。その深度情報をもとに、ピントを合わせたい主被写体はくっきり残し、背景など奥にある部分だけを段階的にぼかす画像処理を行うことで、一眼レフカメラの大口径レンズで撮影したような自然なボケ味を再現している。デュアルカメラによる視差情報や、LiDARスキャナ、機械学習による被写体認識など、深度情報を得る手法は機種によって異なる。
Q5 : 手ぶれによる写真のブレを、レンズやイメージセンサー自体を物理的に動かして打ち消す補正方式を何と呼ぶか。
「光学式手ぶれ補正」(OIS: Optical Image Stabilization)は、手の動きによる振動をジャイロセンサーなどで検知し、その動きを打ち消す方向にレンズやイメージセンサーを物理的に微小に動かすことでブレを抑える方式である。撮影前・撮影中の光の入り方そのものを安定させるため、暗所での長めのシャッタースピード撮影や動画撮影時に効果を発揮しやすい。一方、映像データを撮影後にトリミング・変形して見かけ上ブレを打ち消す「電子式手ぶれ補正(EIS)」は、画角が狭くなったり画質がわずかに低下したりする場合があり、OISとEISを組み合わせて搭載する機種も多い。
Q6 : スマートフォンのカメラで、内部で光を鏡やプリズムで直角に折り曲げることにより、薄い筐体のまま高倍率の光学ズームを実現する構造を何と呼ぶか。
「ペリスコープレンズ」は、望遠鏡や潜望鏡のようにミラーやプリズムを使って光の進む向きを本体内部で直角に曲げる構造のレンズである。通常、高倍率の光学ズームを実現するにはレンズとセンサーの間に一定の距離(焦点距離)が必要だが、薄いスマートフォンの筐体では真っ直ぐにその距離を確保できない。そこで光路を横方向に折り曲げることで、本体の薄さを保ったまま5倍や10倍といった光学ズームを可能にしている。Huawei P30 ProやSamsung Galaxy S20 Ultraなど、高倍率ズームを売りにする機種で採用例が多い。
Q7 : スマートフォンのカメラの画質を評価する際、「画素数(メガピクセル数)」以上に画質を左右する要素として重視されることが多いものはどれか。
写真の画質は画素数だけでなく、光を受け止めるイメージセンサーの物理的な大きさに大きく左右される。センサーが大きいほど1つ1つの画素(受光素子)がより多くの光を取り込めるため、暗い場所でのノイズの少なさや、明暗差の大きい場面での階調表現(ダイナミックレンジ)が向上しやすい。画素数だけを増やしてセンサーサイズが変わらない場合、1画素あたりの受光面積はむしろ小さくなり、高感度撮影時の画質が悪化することもある。そのため近年は「1インチセンサー」のように、画素数と合わせてセンサーサイズを訴求するスマートフォンも増えている。
Q8 : 2000年に発売され、撮影した写真をメールで送信できる機能を搭載した「世界初のカメラ付き携帯電話」として知られる機種はどれか。
2000年11月、シャープが開発しJ-フォン(現ソフトバンク)から発売された「J-SH04」は、背面に11万画素のCCDカメラを搭載し、撮影した写真をメールに添付してその場で送信できる「写メール」機能を実現した。この「写真を撮ってすぐ送る」という体験を一般消費者向けに広めた機種として、世界初のカメラ付き携帯電話と紹介されることが多い。京セラVP-210も1999年に発売されカメラを搭載していたが、写真の送信には別途PHSカードやパソコンとの接続が必要であり、単体で写真を送信できた点でJ-SH04が画期的だったとされる。
Q9 : iPhoneシリーズの中で、背面に初めて2つのレンズ(デュアルカメラ)を搭載したモデルはどれか。
2016年9月に発売された「iPhone 7 Plus」は、iPhoneとして初めて背面に広角レンズと望遠レンズの2つのカメラを搭載したモデルである。この2つのレンズを組み合わせることで、光学2倍ズームや、人物の背景をぼかして撮影できる「ポートレートモード」といった機能が実現された。それ以前のiPhoneはすべて背面カメラがレンズ1つの構成であり、iPhone 7 Plusの登場はその後のiPhone 8 PlusやiPhone Xなど複数カメラ搭載モデルの先駆けとなった。
Q10 : Googleが2018年発売の「Pixel 3」で搭載し、暗い場所でも三脚なしで明るく鮮明な写真を撮影できることで話題になった撮影モードの名称は何か。
「Night Sight(ナイトサイト)」は、Googleが2018年11月にPixel 3向けに提供を開始した夜間撮影モードである。シャッターを切った瞬間の1枚だけでなく、複数枚の写真を連続して撮影し、それらを合成・処理することで、手持ち撮影でも街灯程度の暗さの場所を明るくノイズの少ない写真として仕上げることができる。従来は三脚と長秒露光が必要だった夜景撮影を、スマートフォン単体かつ手持ちで手軽に行えるようにした技術として大きな話題となり、その後多くの他社スマートフォンにも同様の夜景モードが搭載される契機となった。