「現代音楽」と聞くと、難しそうで敬遠してしまう人も多いかもしれません。でも、その背景には、作曲家たちが「音楽とは何か」を問い直し続けてきた刺激的な歴史があります。20世紀以降、音の並べ方や響きの考え方が大きく変わり、新たな表現が次々に生まれました。この記事では、そんな現代音楽の世界を知るためのクイズを10問用意しました。気軽に挑戦しながら、新しい音楽の面白さに触れてみてください。
Q1 : パリに音響・音楽研究所IRCAMを設立し、初代所長を務めた作曲家は誰か エドガー・ヴァレーズ カールハインツ・シュトックハウゼン ピエール・ブーレーズ ジョン・ケージ
IRCAM(イルカム)は、音響と音楽の研究や創作を支援するためにパリに設立された施設で、1977年に開設されました。初代所長を務めたのは、フランスの作曲家で指揮者でもあるピエール・ブーレーズです。ブーレーズは『主のない槌』(1955年)など、厳密な構造と細やかな音色の組み立てで知られ、戦後の前衛音楽を牽引しました。エドガー・ヴァレーズは「音の解放」を唱えた先駆者、シュトックハウゼンは電子音楽の大家、ケージは偶然性の音楽で知られますが、いずれもIRCAMを設立した人物ではありません。ブーレーズは指揮者として現代音楽の普及にも大きく貢献しました。
Q2 : オペラ『浜辺のアインシュタイン』の共同制作者は誰か ダリウス・ミヨー ジャン=リュック・ゴダール ピナ・バウシュ ロバート・ウィルソン
『浜辺のアインシュタイン』は、フィリップ・グラスとロバート・ウィルソンの共作による1976年のオペラです。物理学者アインシュタインをモチーフに、言葉、映像、舞台美術、音楽を組み合わせた前衛的な舞台作品として作られました。上演時間は4時間を超え、反復する音型と、ゆったりと続く場面によって時間の感覚を揺さぶる構成が特徴です。1976年にフランスのアヴィニョン演劇祭で初演され、現代オペラの代表作として知られています。グラスは、ミニマル・ミュージックの手法をオペラに持ち込み、ウィルソンは独自の舞台美術と演出で、従来のオペラの枠組みを大きく広げました。
Q3 : Answer positions are 3 4 1 2 3
4
Q4 : ミニマル・ミュージックの特徴として正しいものはどれか 音列を厳格に配列し、12の音を繰り返さない 偶然性に基づき演奏者が自由に音を選ぶ 大編成のオーケストラで劇的な物語を描く 短い音型を反復しながら少しずつ変化させる
ミニマル・ミュージックは、1960年代のアメリカで生まれた音楽で、短い音型を反復しながら、ごく少しずつ変化させることで時間の感覚をゆっくり変えていくことが特徴です。スティーヴ・ライヒは『ピアノ・フェイズ』(1967年)で、2台のピアノが同じ音型をわずかに速さを違えて演奏し、位相がずれていく技法を確立しました。フィリップ・グラスやテリー・ライリーも、この流れの中心的な作曲家です。音列を厳格に配列する十二音技法や、偶然性に任せる不確定性の音楽は、ミニマル・ミュージックとは異なる方向性の現代音楽です。反復と微細な変化という単純な構造から、豊かな響きが生まれる点が魅力です。
Q5 : ペンデレツキ『広島の犠牲者に捧ぐ哀歌』の編成として正しいものはどれか 管楽器24本のみ 弦楽器52挺 ピアノと打楽器のみ ソプラノ独唱と混声合唱
『広島の犠牲者に捧ぐ哀歌』は、ポーランドの作曲家クシシュトフ・ペンデレツキが1960年に作曲した作品で、原爆の犠牲者を追悼するために書かれました。編成は弦楽器52挺で、弓で弦をこする以外にも、楽器の胴を叩くなどの特殊奏法を多用しています。音の塊が激しくうねり、不協和音による独特の緊張感を生み出すことが特徴です。作曲者は、音を分割して空間に広がる響きを作ることで、音響そのものを主役にしました。この作品は、ペンデレツキの名を世界に知らしめた代表作として、現代音楽の名曲の一つに数えられています。
Q6 : ヤニス・クセナキスの経歴として正しいものはどれか ブラジルで民族音楽を研究した ロンドンの歌劇場の専属指揮者だった 建築家ル・コルビュジエの事務所で建築設計に携わった ベルリン・フィルの首席チェロ奏者だった
ヤニス・クセナキスはギリシャ出身の作曲家で、戦後パリに渡り、建築家ル・コルビュジエの事務所で建築設計に携わりました。1958年のブリュッセル万博のフィリップス館の設計にも参加しています。この建築の経験から、構造や数学的な確率論を音楽に応用する独自の手法を生み出しました。代表作『メタスタシス』(1954年)は、グラフ用紙に描かれた図のような図形楽譜を用い、多数の楽器が滑るように音を変化させる響きが特徴です。数学や建築の知識を音楽に持ち込んだ点で、現代音楽に新しい地平を開いた作曲家として知られています。
Q7 : 映画『2001年宇宙の旅』で使用されたジェルジ・リゲティの作品はどれか 『アトモスフェール』 『ボレロ』 『ワルキューレの騎行』 『ペトルーシュカ』
映画『2001年宇宙の旅』(1968年)では、スタンリー・キューブリック監督がジェルジ・リゲティの『アトモスフェール』(1961年)を使用しました。この作品は、多数の楽器が微細に動く音を重ね、音の塊がゆっくり変化していく「音色の大きな響き」を生み出す手法が特徴です。映画では、宇宙空間や謎の石板モノリスの場面で効果的に使われ、現代音楽が一般の観客に広く知られるきっかけになりました。同じリゲティの『ルクス・エテルナ』もこの映画で使われています。『ボレロ』『ワルキューレの騎行』『ペトルーシュカ』はリゲティの作品ではなく、この映画の選曲にも含まれていません。
Q8 : 十二音技法を体系化した作曲家は誰か ストラヴィンスキー ドビュッシー バルトーク シェーンベルク
十二音技法は、オクターヴ内の12の音を一定の順序に並べた「音列」を基礎とする作曲法です。12の音をすべて使い切るまで同じ音を繰り返さないことで、特定の調に頼らない音楽を組み立てます。アルノルト・シェーンベルクが1920年代前半にこの方法を確立し、後の作曲家に大きな影響を与えました。音列は、逆向きに並べた逆行形や、音程を反転させた反行形などに変形して用いられます。ストラヴィンスキーは後年この技法を取り入れた作品を書きましたが、体系化した人物ではありません。ドビュッシーは印象主義、バルトークは民俗音楽の研究で知られ、いずれも十二音技法の創始者ではありません。
Q9 : オリヴィエ・メシアンの『世の終わりのための四重奏曲』が作曲された背景として正しいものはどれか 第二次世界大戦中、ドイツの捕虜収容所で作曲され、収容所内で初演された 亡命先のニューヨークで映画音楽として依頼された 第一次世界大戦の塹壕で兵士の慰問のために作られた ワーグナーの死を悼んで作られた
『世の終わりのための四重奏曲』は、フランスの作曲家オリヴィエ・メシアンが第二次世界大戦中に捕虜となり、ドイツの収容所に収容されていた時期に作曲されました。編成はヴァイオリン、チェロ、クラリネット、ピアノの4つです。収容所で手に入る限られた楽器を使い、1941年1月に、捕虜仲間や看守を前に初演されました。作品は『ヨハネの黙示録』の一節に着想を得ており、鳥の鳴き声を模した旋律や、独特のリズム技法が特徴です。戦時下の極限状況で生まれた作品として、20世紀の室内楽を代表する名作の一つに数えられています。
Q10 : シュトックハウゼンの『少年の歌』で素材となっているものは何か ギリシャ神話のオルフェウス伝説 旧約聖書『ダニエル書』に登場する三人の若者の歌 中国の古典詩『楚辞』 日本の能『隅田川』
『少年の歌(Gesang der Jünglinge)』は、カールハインツ・シュトックハウゼンが1955年から56年にかけて制作した電子音楽の初期の代表作です。素材は旧約聖書『ダニエル書』に登場する、バビロンの王の火の炉に投げ込まれても神を讃え続けた三人の若者の歌です。作曲者は、少年の歌声の録音を電子的に加工し、人の声と電子音を連続したものとして扱いました。言葉と音色の境界を曖昧にする発想は、電子音楽の表現を大きく広げました。制作は、ケルンにあった西ドイツ放送の電子音楽スタジオで行われ、電子音楽史の重要な出来事として位置づけられています。
Q11 : ジョン・ケージの『4分33秒』の内容として正しいものはどれか 電子音だけで構成される 同じ旋律が12回繰り返される 演奏者は楽器を演奏せず、会場の偶発的な音が作品になる 全員が同じ音を延々と伸ばす
『4分33秒』は、ジョン・ケージが1952年に作曲した作品です。3つの楽章からなる指示が書かれていますが、演奏者は楽器を一切鳴らしません。その間に会場で生じる物音や聴衆の息遣いなど、偶然の音そのものが音楽になります。初演はピアニストのデヴィッド・テューダーが、ニューヨーク州ウッドストックで行いました。ケージは偶然性の音楽を追求し、作曲者の意図だけで音を決めるという考え方から離れていきました。この作品は、音楽とは何か、沈黙とは何かを問い直す象徴的な存在として、現代音楽史で広く知られています。