寒暖差や急な天候変化、思わぬ道迷いなど、山にはちょっとした落とし穴がつきものです。今回は服装やレイヤリング、地形図の読み方、熊対策、行動食、名山の由来まで、山歩きの基本知識を問う全10問のクイズをご用意しました。経験者も初心者も、自分の登山知識を試してみてください。
Q1 : 日本各地の名山100座を選定した『日本百名山』の著者は誰か? 深田久弥 新田次郎 田部重治 加藤文太郎
『日本百名山』は登山家であり作家でもある深田久弥が1964年に発表した紀行文集で、山の品格・歴史・個性という独自の基準から日本各地の100の山を選び紹介したものである。この著作で選ばれた山々は「百名山」として現在も多くの登山者の目標とされ、日本の登山文化に大きな影響を与えた。新田次郎は『孤高の人』などの山岳小説で知られる作家、田部重治は近代登山の先駆者、加藤文太郎は単独行で名を馳せた登山家である。
Q2 : ツキノワグマなど熊との遭遇を避けるための対策として、一般的に有効とされているものはどれか? 熊鈴やラジオなどで人の存在を知らせながら歩く 食べ物の匂いを消すため大声で笑う 熊よけにハッカ油を体に直接塗る なるべく静かに歩き熊を驚かせないようにする
ツキノワグマなどの熊は基本的に人を恐れて自ら避ける習性があるため、熊鈴やラジオ、会話の声などで人の存在を事前に知らせながら歩くことが最も有効な予防策とされる。特に沢音が大きく人の気配が伝わりにくい場所や、見通しの悪いカーブ・藪の多い場所では意識的に音を出すことが推奨される。逆に足音を忍ばせて静かに歩くことは、熊との予期せぬ鉢合わせ(バッタリ遭遇)のリスクを高めてしまうため避けるべきとされている。
Q3 : 登山中に食べる「行動食」の目的として最も適切なものはどれか? 休憩を長く取るための口実にする 下山後の夕食の量を減らす 歩きながらこまめにエネルギーを補給し、シャリバテを防ぐ 荷物の重さを軽くするため食事を1回にまとめる
行動食とは、休憩時にまとまった食事を取る代わりに、歩きながらこまめに口にできる軽量で高カロリーな補給食のことを指す。長時間の運動でエネルギー切れを起こすと、血糖値が急激に低下して「シャリバテ(ハンガーノック)」と呼ばれる強い脱力感や判断力低下が起こり、事故につながる危険がある。これを防ぐため、チョコレートやナッツ、羊羹、飴などを少量ずつこまめに摂取することが登山では推奨されている。
Q4 : 山頂などで拝む日の出のことを指す登山用語はどれか? 雲海 御鉢巡り ブロッケン現象 御来光
山頂など高所で拝む日の出のことを「御来光(ごらいこう)」と呼ぶ。特に富士山山頂での御来光は有名で、多くの登山者が夜間から登り始めるご来光登山を行う。混同されやすい言葉に「雲海」があり、これは雲を山の上から見下ろした際に海のように一面に広がって見える現象を指す。また「ブロッケン現象」は太陽を背にしたときに自分の影の周りに虹色の光の輪が浮かび上がる現象で、御来光とは異なる自然現象である。
Q5 : 登山用ストック(トレッキングポール)を使用する主な利点として適切なものはどれか? 膝や脚への負担を軽減し、バランスを保ちやすくする 荷物の総重量を大幅に減らす GPSの電波を受信しやすくする 虫よけの効果がある
トレッキングポール(登山用ストック)は、特に下り坂において膝や脚にかかる衝撃を腕にも分散させることで、体への負担を軽減する効果がある。また不安定な岩場やぬかるんだ道、渡渉時のバランス保持、登り坂での推進力補助にも役立つ。長時間・長距離を歩くハイキングでは疲労の蓄積を抑える効果的な道具とされるが、下りと登りで長さを調整するなど正しい使い方を身につけることが重要とされている。
Q6 : 登山の服装において、汗をかいた際になかなか乾かず体を冷やす原因になりやすいため、避けるべきとされる素材はどれか? ポリエステル 綿(コットン) ウール ナイロン
綿(コットン)素材は吸水性に優れる一方で乾きが遅く、汗を吸うと繊維が重くなり、その水分が蒸発する際の気化熱によって体温を奪ってしまう。そのため低体温症のリスクを高める素材として、登山の世界では「山では絶対に綿を着るな」と言われるほど避けられる。代わりに、汗を素早く発散させる速乾性のポリエステルなどの化学繊維や、濡れても保温力を維持できるウール素材のウェアが推奨されている。
Q7 : 富士山は標高3776mで日本最高峰として知られるが、日本第2位の標高を持つ山はどれか? 北岳 富士山 槍ヶ岳 奥穂高岳
富士山は標高3776mで日本最高峰として知られる。2位は南アルプスに位置する北岳で標高3193m、3位は奥穂高岳および間ノ岳が3190mで並ぶ。富士山は静岡県と山梨県にまたがる独立峰で、その美しい円錐形の山容から古くから信仰の対象とされ、2013年には「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」として世界文化遺産にも登録された。夏季には多くの登山者が山頂からのご来光を目指して訪れる、日本を代表する山である。
Q8 : 登山におけるレイヤリングの基本で、汗を素早く吸収し外側に逃がす役割を持つ、肌に直接触れる衣類の層を何と呼ぶか? ミドルレイヤー ベースレイヤー シェルレイヤー インサレーションレイヤー
レイヤリング(重ね着)は登山における基本的な体温調節技術で、肌に直接触れる衣類の層を「ベースレイヤー」と呼ぶ。汗を素早く吸収・拡散して乾いた状態を保つことで、気化熱による体温低下や低体温症を防ぐ役割を持つ。速乾性に優れたポリエステルなどの化学繊維や、濡れても保温力を保つメリノウールが多く用いられる。この上に保温を担うミドルレイヤー、風雨を防ぐシェルレイヤーを重ねることで、状況に応じて脱ぎ着し体温を調整できるのが登山の基本的な服装管理の考え方である。
Q9 : 地形図において等高線の間隔が狭くなっている場所は、どのような地形を示しているか? 傾斜が緩やかな場所 傾斜が急な場所 平坦な場所 水がたまりやすい窪地
地形図上の等高線は同じ標高の地点を結んだ線であり、その間隔が狭いほど短い水平距離の中で標高が大きく変化していることを意味し、傾斜が急な地形を表す。逆に間隔が広い場所は緩やかな傾斜や平坦地であることが多い。登山計画を立てる際には、この等高線の密度からルート上の急登や危険箇所をあらかじめ把握することができ、地図読みの基本技術として登山者にとって重要な知識とされている。
Q10 : 登山中に道に迷ってしまった場合、遭難対策の鉄則として基本的に取るべき行動はどれか? 沢を下って川沿いに進む 日が暮れるまで下り続ける GPSの電池を温存するため即座に電源を切る 尾根まで登り返す
登山中に道に迷った際は、沢や谷筋を下ってはならないというのが遭難対策の鉄則である。沢を下ると滝や崖、増水した流れに阻まれて進退窮まり、滑落や転落による重大事故につながりやすい。一方、尾根や稜線は見通しが良く、来た道を確認したり地図と照らし合わせて現在地を把握しやすいため、迷ったら沢へ下らず尾根まで登り返すことが原則とされる。この教訓は「迷ったら登れ」という言葉で登山者の間に広く伝えられている。
Q11 : 雷が発生した場合、ハイキング中にとるべき安全な行動はどれか? 尾根や開けた高所に避難する 開けた場所でそのまま待機する 湖や金属物の近くに移動する 高所や孤立した木・金属から離れて低地に移動し、グループでは間隔を取り姿勢を低くする
雷発生時は尾根・山頂・開けた高地・孤立した高木や金属物は避けるべき場所です。安全対策としてはできるだけ低い場所に移動し、湖や水辺は避ける、金属製品や長い金属ポールから離れることが重要です。グループでは密集すると複数の人が被害を受けやすくなるため一定の間隔(数メートル)を保ち、姿勢を低くして地面に広く接する行動(完全に伏せることは推奨されない場合もある)をとります。状況によっては速やかな下山や避難が必要です。
Q12 : 等高線が地図上で非常に密集している場所は地形的にどのような特徴を示すか? 平地 河川敷 急斜面(傾斜が急) 山頂付近でしか見られない
等高線は等しい標高を結んだ線で、等高線の間隔が狭いほど短距離で高低差が大きい=傾斜が急であることを示します。逆に等高線が広く離れている場所は緩やかな斜面や平坦地です。等高線の形や間隔を読むことで尾根や谷、鞍部の位置も推定でき、安全なルート計画や危険箇所の把握に役立ちます。等高線が密集していること自体は必ずしも山頂だけに限られず、崖や切り立った斜面でも見られます。
Q13 : 靴ずれ(マメ)を防ぐための有効な対策として最も適切なのはどれか? 適切なフィットの靴、靴下の選択、足の予防処置(テーピング) 裸足で歩く サイズの小さい靴を履く 濡れた靴で長時間歩く
マメ予防の基本は靴と靴下の適切な選択です。靴は幅や長さが合っていること、つま先に余裕があることが重要で、靴下は速乾性・クッション性のあるものを選びます。足に摩擦が生じやすい部位にはテーピングやバンデージを貼る、インソールで足のズレを減らす、靴の慣らし履きを行う、濡れた靴や靴下は摩擦を増やすため速やかに乾かすか交換することが予防に有効です。裸足や小さい靴はマメを悪化させる原因になります。
Q14 : 山の沢などで水を補給するとき、一般的に推奨される処理方法はどれか? 何もせずそのまま飲む 浄水器フィルターか煮沸、または適切な浄化剤の使用 太陽光だけでそのまま消毒する アルコールを混ぜて消毒する
自然の流水には病原微生物や寄生虫が含まれていることがあり、生水をそのまま飲むと下痢や感染症の原因になります。安全な携行法としては、浄水フィルター(ウイルスを除去できるタイプや微粒子を除去するタイプ)、煮沸(少なくとも1分間、標高が高い場合は時間を延長)、または塩素や二酸化塩素系の浄化剤の使用が一般的に推奨されます。紫外線(UV)処理器も有効ですが電池や機器の管理が必要です。アルコールは飲料水の消毒法としては標準的ではありません。
Q15 : 低体温症(ハイポサーミア)の兆候として正しくないものはどれか? 震え(初期) 判断力の低下 皮膚が熱く乾く 言語障害や動作のぎこちなさ
低体温症では体温が低下することで震え(初期段階)、思考力や判断力の低下、言語が不明瞭になる、運動失調や動作がぎこちなくなるなどの症状が現れます。皮膚は冷たく湿っていることが多く、温かく乾いた皮膚はむしろ熱中症など体温が上がる状態で見られることがあるため、低体温症の兆候として「皮膚が熱く乾く」は誤りです。疑いがある場合は保温と温かい飲み物、濡れた衣類の交換、速やかな下山や救助を検討します。
Q16 : トレイルですれ違う際のエチケットで、一般的に優先されるのはどちらか? 下る人が譲る 上る人に優先権がある 速い方が優先 荷物が重い方が優先
登山道やトレイルでは一般的に「上る人に優先権がある」とされています。上りは勢いを止められると再発進に大きな労力が必要になるため、下る側が脇に寄る・立ち止まるなどして通し、上る側を優先するのがマナーです。特に狭い道や急斜面では両者の安全確保が重要なので、事前に声を掛け合い、互いに協力して通行することが望まれます。速さや荷物の重さで優先を決めないのが常識です。
Q17 : 高山病の初期症状に含まれるものはどれか? 腹部の腫れ 頭痛と吐き気 皮膚の硬化 目の充血
急速な高度上昇により起きる高山病(AMS: Acute Mountain Sickness)の代表的な初期症状は頭痛、吐き気、めまい、疲労感、食欲不振、睡眠障害などです。これらは脳や肺の酸素不足に起因するため、症状が出たら標高を上げない、安静にする、水分をしっかり補給する、重症化(意識障害や呼吸困難)が疑われる場合は速やかに降下することが重要です。腹部の腫れや皮膚の硬化、目の充血は典型的な初期症状ではありませんが、個人差があるため異変を感じたら慎重に対処する必要があります。
Q18 : コンパスと地図を用いる際、地図の真北とコンパスが示す磁北の差を表す用語は何か? 経度 等高線 偏差(磁気偏差) 地殻運動
地図上の真北(地理的北)とコンパスの示す磁北(磁石の北)には角度差があり、これを磁気偏差(デクライン、declination)と呼びます。地域ごとに偏差の値と方向(東偏・西偏)が異なり、その値は地図の余白や航海用資料で確認できます。正しい方位を取るには地図の方位と磁針方位の差を補正して読み替えることが必要で、補正を怠ると目的地を外れる原因になります。経度や等高線は別の概念で方向補正には使いません。
Q19 : 日帰りハイキングのバックパックに最低限含めるべきアイテムとして適切なのはどれか? 水・行動食・レインウェア・地図・救急セット 薪・コンロ・テント 車の鍵のみ 大型スピーカー
日帰りハイキングでも安全のために最低限の装備が必要です。水は行動中の脱水を防ぐため必須、行動食はエネルギー補給用、レインウェアは天候急変時の防水・保温、地図と方位確認道具は道迷い対策、救急セットは怪我やトラブルの応急処置に役立ちます。その他、日差し対策(帽子・日焼け止め)、ヘッドランプ、予備の防寒具、携帯電話や予備バッテリー、トイレ用品なども推奨されます。薪やテントは日帰りでは不要で荷重増加の原因になります。
Q20 : 踏み跡のない自然地でのハイキング時、Leave No Traceの原則で正しいものはどれか? 出たゴミは持ち帰る 可燃ゴミは埋める 生ゴミはその場に残す 燃やして処分する
Leave No Trace(LNT)は自然環境への影響を最小限にする原則で、出たゴミやパッキング資材、食べ残しは必ず持ち帰ることが基本です。埋める・燃やす・放置すると土壌や動植物に悪影響を与え、野生動物の行動を変えたり病気を広げる原因になります。特にプラスチックなどは分解されず長期的な汚染源になるため、出たゴミは自宅まで持ち帰り、適切に分別・処分することが推奨されます。またトイレの処理にもルールがあり、人間の排泄物は指定場所か適切に処理することが求められます(地域の規則に従う)。