ボルダリングを楽しみながら学べる、クイズ形式の全10問。マットを使った安全対策から、V・フォントといった難易度表記、クリンプやヒールフックなどの技術用語、五輪種目としての歴史まで、初心者から経験者まで意外と知らない知識が詰まっている。何問正解できるか、さっそく挑戦してみよう。
Q1 : ボルダリングでクライマーが手に付ける「チョーク」の主な役割は何?
チョークは主に炭酸マグネシウムを主成分とする白い粉で、手のひらや指の汗・皮脂を吸収することでホールドとの摩擦を高め、滑りにくく握りやすい状態を保つために使われる。チョークバッグや床に置くチョークバケツから手に付けて使うのが一般的で、ボルダリングに限らずロープクライミングなどクライミング全般で広く使用される必需品となっている。
Q2 : ボルダリングで、両手両足を同時に壁から離すほど勢いよく跳び上がり、遠く離れたホールドを掴みにいく動的なムーブを何と呼ぶ?
ダイノ(dynamic moveの略)は、静的な体勢では届かない遠いホールドに対して、体全体の勢いを使って跳躍するようにジャンプし掴みにいく技術で、ボルダリングを象徴するダイナミックなムーブのひとつである。対してマントルは壁の上に体を押し上げる動作、フラッギングはバランスを取るために片足を壁面に添わせる技術、ヒールフックはかかとをホールドに掛ける技術であり、それぞれ用途が異なる。
Q3 : ボルダリングで、手ではなく足のかかとをホールドに引っ掛けて体を引きつけたり安定させたりする技術を何と呼ぶ?
ヒールフックは足のかかと部分をホールドや壁の突起に引っ掛けて体を引き寄せたり、逆方向への力に耐えて姿勢を安定させたりする技術で、傾斜のきつい壁やルーフ状の課題で特に重要になる。似た技術のトゥフックはつま先をホールドに掛ける方法、スメアリングは足裏全体を壁に押し付けて摩擦で支える方法、フラッギングはバランスを取るために片足を壁面に添わせる技術を指す。
Q4 : 体操経験を活かした高難度のムーブを取り入れ、現代のボルダリングをスポーツとして発展させた第一人者として知られ、「近代ボルダリングの父」とも呼ばれる人物は誰?
ジョン・ギルは1950年代後半から1960年代にかけて活動したアメリカのクライマーで、体操選手としての経験を活かしたダイナミックなムーブや高難度課題への挑戦を通じて、それまで登山のトレーニング的位置づけだったボルダリングを独立したスポーツ・競技分野として発展させた先駆者とされる。ラインホルト・メスナーは無酸素での八千メートル峰登頂で知られる登山家、エドモンド・ヒラリーはエベレスト初登頂者、アレックス・オノルドはロープなしのフリーソロで有名な現代クライマーであり、それぞれ専門分野が異なる。
Q5 : ボルダリングにおいて、ロープを使わない代わりに落下時の安全を確保する方法として正しいものはどれ?
ボルダリングはロープやハーネスなどの確保器具を使わずに、通常数メートル以内の低い壁や岩を登るクライミング形式である。安全対策として、地面にクラッシュパッドと呼ばれる厚手のマットを敷き、さらにスポッターと呼ばれる補助者が近くに立ってクライマーの落下時に姿勢を安定させたり頭部などを保護したりする役割を担う。ロープやハーネス、カラビナによる確保はリードクライミングなど別のクライミング形式で用いられる方法である。
Q6 : 2020年東京オリンピックのスポーツクライミング競技で、ボルダリングと共に「複合」種目を構成した他の2種目は「スピード」と何?
東京オリンピックのスポーツクライミングは、当時「スピード」「ボルダリング」「リード」の3種目の成績を合算する複合(コンバインド)形式で実施され、男女それぞれ1つの金メダルのみが決まる方式が採用された。この方式は種目特性の異なる3つを一度に評価する点で賛否があり、後のパリ2024大会ではボルダリング&リードとスピードが別種目として分離される形に変更された。
Q7 : ボルダリングにおいて、欠けた小さなホールドの縁を指先の第一関節付近で強く握り込む持ち方・技術を何と呼ぶ?
クリンプは指先を鋭角に曲げて小さなエッジ状のホールドを強く握り込む持ち方で、指への負担が大きくケガのリスクも高い技術として知られる。一方ジャグは握りやすい大きなホールド、スローパーは丸みを帯びて滑りやすく摩擦頼みのホールド、ピンチはつまむように持つホールドを指し、それぞれ持ち方や必要な力の入れ方が異なる代表的なホールドの種類・技術である。
Q8 : ボルダリングの難易度を表す代表的なグレードシステムのうち、「V0」「V5」のように「V」に数字を付けて表記するものは何と呼ばれる?
Vスケールはアメリカ発祥のボルダリング専用グレード体系で、数字が大きくなるほど難易度が高くなる。V0から始まり、トップクライマーはV16やV17クラスの課題を登る。フォントスケールはフランス発祥の同様のボルダリング用グレード表記、YDSやUIAAスケールは主にロープを使うルートクライミングの難易度表記に使われるものであり、それぞれ用途や発祥地が異なるため区別されている。
Q9 : フランスのフォンテーヌブロー(Fontainebleau)発祥で、「6A」「7B+」のように数字とアルファベットを組み合わせてボルダリングの難易度を表すグレードシステムは何と呼ばれる?
フォントスケールはフランスの名クライミングエリアであるフォンテーヌブローに由来するボルダリング用の難易度表記で、数字とアルファベット(A・B・Cなど)、さらに必要に応じて+を組み合わせて細かく難易度を区分する。ヨーロッパを中心に世界的に広く使われており、アメリカ発祥のVスケールと並んでボルダリングの難易度を表す二大グレード体系のひとつとされている。
Q10 : ボルダリングでロープの代わりに、落下時の衝撃を吸収するために地面に敷くマットの名称は何?
ボルダリングはロープや確保用のハーネスを使わず、数メートル程度の低い壁や岩を登る形式のクライミングである。そのため、万一の落下に備えて地面に厚手のクッション性の高いクラッシュパッドと呼ばれるマットを敷き、衝撃を和らげるのが基本的な安全対策となる。ハーネスやビレイデバイスはロープを使うリードクライミングなどで確保のために使う器具であり、チョークバッグは滑り止め用の粉(チョーク)を持ち歩くための道具であるため、いずれも落下時の衝撃吸収を目的とするものではない。
Q11 : 東京2020オリンピックのスポーツクライミング女子複合で優勝した選手は誰か?
東京2020大会(実施は2021年)のスポーツクライミング女子複合では、スロベニアのヤンヤ・ガルンブレトが圧巻の強さで金メダルを獲得した。特に得意とするボルダリングで唯一の2トップを奪い決勝を支配し、スピードとリードでも高順位を確保したことが勝因である。日本の野口啓代は銅、ポーランドのミロスラフはスピード1位ながら総合には届かなかった。ガルンブレトはワールドカップ・ボルダーで通算30勝以上を誇り、完成度の高さがオリンピックでも発揮された。
Q12 : ボルダリングで「カチ持ち」をする際、最も起こりやすい怪我はどれか?
カチ持ちは第一関節を強く曲げ第二関節を伸ばすことで小さなエッジに最大荷重をかける保持方法で、指への負担が非常に大きい。特に指腱を骨に固定しているA2プーリーに強大な張力が掛かり、部分断裂や完全断裂が頻発する。肩や膝の怪我は別動作で起こるが、カチ持ち特有の負傷として最も典型なのはA2プーリー損傷であるため、ウォームアップやオープンハンドとの併用が推奨される。
Q13 : ボルダリングで「クリンプ」とも呼ばれる持ち方は日本語で何と呼ばれるか?
クリンプは英語で「つぶす」という意味から来ており、浅いエッジを指先でつかむ形。日本のクライマーは古くからこれを「カチ持ち」と呼んでいる。第一関節を鋭角に曲げることで指端に体重を集中させ小さいホールドを保持できるが、その反面プーリー損傷のリスクが高い。オープンハンドは指を伸ばし気味に保持する方法、ガストンやアンダークラングは力をかける方向が異なる別のムーブである。
Q14 : ボルダリング用語「ガストン」は主にどの方向に力を加えるムーブか?
ガストンはフランス人クライマー、ガストン・レビュファによるムーブ名で、肘を張り出しながら手のひらを外側へ向け、壁を左右に押し広げるように力を加える保持方法。肩と胸筋を使って横方向に体を安定させるのが特徴で、葉っぱのように指を広げて縁を押さえる形になる。下から上へ押すアンダークラングや手前に引くラップとは力のベクトルが異なり、外傾壁で側圧を得たい場面で重宝する。ガストンでは肘の位置が高すぎると疲労が早く、低すぎるとホールドから滑るため、角度調整が重要である。
Q15 : ボルダリング課題の初登者が名前の後に付ける「FA」の略は何か?
FAは“First Ascent”の略で、自然岩やジム課題を最初に完登したクライマーを示す慣例的な記号。初登者はラインを見抜き、スタートからトップまでの連続ムーブを初めてつなげることでグレード提案も行う。First Attemptは一回目のトライ、Anchorは支点、Final Ascentは造語であり、使われない。クライミング文化ではFAの記録が歴史として重視され、名前と日付がトポに刻まれる。初登はルートの倫理や保護方法を決定づける責任も伴い、その後に登るクライマーが基準とする重要な指標となる。
Q16 : ジムの課題表示で使われる「セッター」の役割は何か?
セッター(ルートセッター)は壁にホールドやボリュームを取り付け、グレードやテーマに沿った課題を創作する専門職で、ジムの楽しさを左右するキーパーソン。ムーブの流れや安全動線、グレードバランスを考慮しながらインパクトレンチで取り付け、試登によって完成度を吟味する。受付や清掃は別スタッフが担うことが多く、応急処置は資格を持つ救護員の役割である。セッターは継続的に課題を入れ替え顧客を飽きさせない。
Q17 : ボルダリングで「スローパー」と呼ばれるホールドの特徴はどれか?
スローパーは丸みを帯びた傾斜面で指を掛けられる縁がほとんどなく、手のひら全体と摩擦で保持するホールド。深いポケットや鋭いエッジとは対照的で、握力よりも体重移動や角度調整が重要となるため、中級者がバランス感覚を養うのに好んでセットされる。滑りやすいのでチョーク量や肘の位置もポイントとなり、体幹がぶれると一瞬で落下する。
Q18 : ボルダリングの「Vグレード」表記を最初に導入した人物は誰か?
Vグレードはアメリカ・テキサス州ヒューコタンクスで活動していたクライマー、ジョン“バーミン”シャーマンが1990年代初頭に提唱したグレーディングシステムで、彼のニックネーム“Vermin”の頭文字からV0、V1と段階的に難度を示す。従来のYDSでは細かいボルダリング課題の差が表しにくかったため作成され、現在は世界中の屋外課題やジムでも広く採用される。
Q19 : IFSC公式大会のボルダリング決勝における1課題あたりの制限時間は何分か?
IFSC競技規則では決勝ラウンドの各課題に対し4分間の「4分ルール」が適用される。選手はその間に好きなだけトライでき、4分経過時にすでに壁に取りついていれば継続が認められる。以前は5分が標準だったが2018シーズンからスピード感を高める目的で短縮され、戦略やレスト配分がよりシビアになった。3分や6分といった設定は公式戦では用いられていない。
Q20 : 液体チョークの主成分として最も一般的に使用されているアルコールはどれか?
液体チョークは炭酸マグネシウムの粉末をアルコールで懸濁したもので、塗布後にアルコールが揮発して手汗を乾かし、粉が手のひらに密着する。消毒効果も期待できるためクライミングジムで普及した。アルコールとしては揮発速度が速く、皮膚刺激が比較的少ないイソプロパノール(2-プロパノール)を採用する製品が多い。メタノールは毒性が強く、エタノールやブタノールは乾燥速度や臭気の点で主流ではない。