感情をそのまま音にしたい。19世紀のヨーロッパで、作曲家は歌曲や交響曲、オペラ、バレエへと表現の幅を広げていきました。恋や旅、夜の静けさ、死への想いまで、音楽が物語を語り出したのがロマン派の時代です。名曲の裏には、意外な人物のつながりや、知るほど聴こえ方が変わるエピソードも少なくない。今回はそんなロマン派音楽の世界を10問で振り返ります。耳なじみの曲も初めての曲も、気軽に挑戦してみてください。
Q1 : ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』が初演された都市は?
ドヴォルザークの交響曲第9番ホ短調『新世界より』は、1893年12月16日にニューヨークのカーネギー・ホールで初演されました。作曲者は、ニューヨークの国立音楽院の院長を務めるために渡米しており、アメリカで受けた印象を作品に反映させたとされています。初演はニューヨーク・フィルハーモニックが演奏し、指揮はアントン・ザイドルが務めました。プラハはドヴォルザークが活動したボヘミアの首都で、ウィーンやベルリンはヨーロッパの音楽都市ですが、いずれも初演地ではありません。第2楽章の旋律は、後に歌曲『家路』として親しまれるようになったことでも有名です。
Q2 : ピアニスト・作曲家クララ・シューマンの旧姓は?
クララ・シューマン(1819〜1896年)は、ドイツのピアニストかつ作曲家で、旧姓はヴィークです。父フリードリヒ・ヴィークは娘の才能を見出し、厳格な教育によって幼くして演奏家としての道を歩ませました。成長したクララは、1840年に作曲家ロベルト・シューマンと結婚し、夫の作品の初演や紹介にも力を尽くしました。ヴェーバーやメンデルスゾーン、ブラームスはいずれも当時の著名な作曲家ですが、クララの旧姓とは関係がありません。夫妻はともにロマン派音楽の中心人物として知られ、クララはピアノ協奏曲や歌曲などの作品も残しています。結婚には父親の強い反対があったことも、よく知られた経緯です。
Q3 : ヴェルディのオペラ『椿姫』の原作小説『椿姫』を書いた作家は?
ヴェルディのオペラ『椿姫』(1853年にヴェネツィアで初演)の原作は、アレクサンドル・デュマ(子)が1848年に発表した小説『椿姫』です。作者のデュマ(子)は、『三銃士』で知られる父アレクサンドル・デュマと区別するため「子」と呼ばれます。小説は、パリの高級娼婦マルグリットと青年アルマンの悲恋を描いたもので、作者自身の体験や、ある女性との実際の関係が題材になったともいわれています。ヴィクトル・ユーゴーは『レ・ミゼラブル』、ギュスターヴ・フローベールは『ボヴァリー夫人』、エミール・ゾラは『居酒屋』などで知られる作家で、いずれも『椿姫』の原作者ではありません。
Q4 : 次のうち、チャイコフスキーの作品ではないバレエ音楽は?
チャイコフスキーは、『白鳥の湖』(1877年)、『眠れる森の美女』(1890年)、『くるみ割り人形』(1892年)の三大バレエを作曲したことで知られています。一方、『ジゼル』は、フランスの作曲家アドルフ・アダンが1841年に初演したバレエ作品で、ロマン派バレエの代表作の一つです。作曲者がチャイコフスキーではないため、今回の問いの正解になります。『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』はいずれもチャイコフスキーの作品で、世界中のバレエ団で上演され続けています。ロマン派のバレエは、幻想的な女性像や踊りの技術が重視された点に特徴があり、『ジゼル』はその代表例として知られています。
Q5 : リストの『死の舞踏』の主題に用いられた中世の聖歌は?
リストの『死の舞踏』(1849年作曲)は、ピアノと管弦楽のための変奏曲で、主題にグレゴリオ聖歌の『怒りの日(ディエス・イレ)』が用いられています。『怒りの日』は、死者のためのミサで歌われる鎮魂の聖歌で、最後の審判を題材にした歌詞を持っています。リストはこの旋律を変奏させながら、死の恐怖や人間の運命を劇的に描きました。『アヴェ・マリア』は聖母への祈りの歌、『復活祭の賛歌』は復活祭に歌われる典礼の歌、『神の子羊』は典礼文の一つで、いずれも『死の舞踏』の主題ではありません。宗教的な旋律を、ロマン派らしい幻想と劇性の中で再構成した点が、この作品の特徴です。
Q6 : ワーグナーの『ニーベルングの指環』4部作の最後の作品は?
『ニーベルングの指環』は、『ラインの黄金』『ワルキューレ』『ジークフリート』『神々の黄昏』の4部からなる楽劇の大作です。全体の上演には4夜を要し、神々の没落を描いて物語が完結します。最後の作品にあたるのが『神々の黄昏』で、神々の世界と指環をめぐる争いがクライマックスを迎えます。『パルジファル』『タンホイザー』『ローエングリン』もワーグナーの代表作ですが、いずれも『指環』とは独立した作品であり、4部作の構成には含まれません。ワーグナーはこの作品でライトモチーフを多用し、登場人物や事物を示す動機を織り交ぜながら、壮大な物語を音楽で描き出しました。
Q7 : 夜想曲(ノクターン)というジャンルを確立したとされるアイルランド出身の作曲家は?
夜想曲(ノクターン)は、夜の静けさや情緒を表す器楽曲のジャンルで、その確立者とされるのはアイルランド出身のピアニスト・作曲家ジョン・フィールド(1782〜1837年)です。フィールドは、ロシアのサンクトペテルブルクなどで活動し、穏やかで歌うような旋律を、左手の分散和音が支えるスタイルを生み出しました。その後、このジャンルはショパンによって芸術的に大きく発展させられ、ノクターンの名声は広く知られるようになりました。ヘンリー・パーセル、ジョン・ダウランド、トマス・アーンはいずれもイギリスの作曲家ですが、時代が異なり、夜想曲の創始者ではありません。ショパンと結びつけて語られやすい点も、この問題の要所です。
Q8 : ブラームスの交響曲第4番ホ短調の終楽章が採用している形式は?
ブラームスの交響曲第4番ホ短調(1885年初演)の終楽章は、パッサカリア形式で書かれています。パッサカリアは、低音部で繰り返される主題(低音主題)の上にさまざまな変奏を重ねていく形式です。この楽章では、バッハのカンタータに由来する主題が低音で何度も反復され、その上に多彩な変奏が積み重ねられていきます。ロンド形式は主題が繰り返し戻ってくる形式、ソナタ形式は提示・展開・再現の三部からなる形式、三部形式はA-B-Aの構成を指し、いずれも終楽章の構造とは異なります。古い形式を用いて重厚な響きを生み出した点は、過去の音楽を尊重しながら新しさを求めたブラームスの姿勢の表れとして知られています。
Q9 : シューベルトの連作歌曲集『冬の旅』の原詩を書いたのは誰?
『冬の旅』は、1827年に作曲された全24曲からなる連作歌曲集です。原詩を書いたのは、ドイツの詩人ヴィルヘルム・ミュラー(1794〜1827年)で、彼の詩集に収められた詩に曲がつけられました。ミュラーは、同じくシューベルトの歌曲集『美しき水車小屋の娘』の原作者でもあり、二つの作品は同じ詩人の詩によって結ばれています。ゲーテ、ハイネ、シラーもドイツ語圏を代表する詩人ですが、この連作の原詩はミュラーのものです。失恋と放浪を主題とする孤独な旅の物語を、詩と旋律が一体となって描いた点で、ロマン派歌曲の代表作とされています。
Q10 : ベルリオーズの『幻想交響曲』で、恋人を象徴して全曲に繰り返し現れる旋律は何と呼ばれる?
ベルリオーズの『幻想交響曲』(1830年初演)は、副題「ある芸術家の生涯のエピソード」を持つ標題音楽です。作曲者は、当時思いを寄せていた女優ハリエット・スミッソンへの強い感情を、この曲の中心に据えました。その恋人の姿を象徴するため、全曲を通して繰り返し現れる旋律が「イデー・フィクス(固定観念)」と呼ばれるものです。曲想や楽器編成が変わっても、この旋律は姿を変えながら何度も戻ってきて、作品全体を統一する役割を果たします。ライトモチーフはワーグナーのオペラで人物や概念を示す動機を指す用語で、混同されやすい言葉ですが、ベルリオーズの作品に対する正しい答えは「イデー・フィクス」です。
まとめ
いかがでしたか? 今回はロマン派クイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回はロマン派クイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。