蒔絵師が極細の線や点を描くために用いる、獣毛を束ねた独特の構造を持つ筆を何と呼ぶか?
蒔絵筆は、樺の軸にネズミやイタチなどの細く弾力ある毛をごく少量だけ束ね、口金を持たない“割筆”形式を採ることで、漆が毛管で穂先に常に送り出されるよう工夫された筆である。これにより漆線の太さを圧力だけで自在に変えられ、平蒔絵の細線から高蒔絵の盛り上げ線まで一本で対応できる。付立筆は日本画の濃淡表現、削用は木彫の荒取り、刷毛は面塗りに使われ、蒔絵の精緻な描線には適さない。筆の保存には穂先を生漆で包んで乾燥を防ぐなど独自の手入れ法があり、道具管理も技術の一部とされている。