狂言でめったに用いられない面をあえて着け、狐と人間の化かし合いを描く名作はどれでしょうか。
狂言は能に比べ面を使用する演目が少ないが、『釣狐(つりぎつね)』は狐の精にふさわしい写実的な狐面を掛ける珍しい曲。老獪な猟師に化かし合いを挑む狐の悲哀と滑稽を兼ね備え、演者の高度な演技力が要求される。宇治の晒や昆布売、水掛聟はいずれも面を使わず生の表情で笑いを表現する典型的狂言。面を着けることで表情が隠れるため、『釣狐』では身振りや声色で感情を伝える必要があり、狂言師の力量が試される。従って正解は釣狐である。