福岡県発祥の民謡踊り『炭坑節』の歌詞に登場し、月が昇る舞台として歌われる炭坑はどこ?
『炭坑節』は大正末期から昭和初期にかけて福岡県三池地方で歌われた作業唄が原型で、冒頭の「月が出た出た 三池炭鉱の上に出た」というフレーズで広く知られている。三池炭鉱は江戸期から昭和後期まで国内最大級の出炭量を誇り、筑後地方の経済と文化を支えた。炭坑節は炭車押しや石炭切りの動作を取り入れた踊りが特徴で、戦後には全国の盆踊りで親しまれるスタンダード曲となった。夕張や池島など炭坑の名を替えて地域バージョンが派生したため混同されがちだが、原曲は三池炭鉱を歌い込んでいる点が決定的な違いである。歌詞に登場する月は、夜勤に従事する坑夫たちの休息と希望を象徴し、踊りで腕を大きく回す振りは炭車を押す力感を演出している。