近松門左衛門作『冥途の飛脚』で、手形金を横領して恋仲の遊女を救おうとする主人公・忠兵衛の職業は何か?
忠兵衛は大阪の飛脚問屋である亀屋の養子で、公金を扱う立場にあった。物語では彼が手形金の期日を守れず遊女梅川を身請けするために金を使い込み、追い詰められて最終的に心中へ向かう。飛脚問屋は公金や手形を預かり諸国に届ける重要な物流兼金融の職種であり、その信頼が生命線となる。主人公がその信頼を裏切ることで社会的制裁と道徳的葛藤が重なり、世話物の悲劇性がいっそう深まる。酒屋や大工、侍は劇中で忠兵衛と無関係である。