弾性クイズ
弾性は、工学や材料科学の基本的な概念の一つです。物体の変形と内部応力の関係を表すフックの法則から、材料定数のヤング率やポアソン比、せん断弾性率、体積弾性率といった重要な量が定義されます。これらの弾性特性は、材料の設計や応力解析、破壊現象の理解に不可欠な知識です。以下の10問のクイズを通じて、弾性に関する基本的な理解を深めていきましょう。
Q1 : 材料の応力-ひずみ曲線で「降伏点(yield point)」が示す現象はどれか? 比例限界(フックの法則が成り立たなくなる点) 塑性変形が始まる応力のレベル(永久ひずみが発生し始める点) 最大引張強さ(ultimate tensile strength) 試験片の破断が起きる点
降伏点は材料が弾性領域を超えて塑性変形を開始する応力のレベルを示します。降伏以降は荷重を除去しても永久ひずみが残り、応力-ひずみ曲線は弾性の直線を外れます。金属では降伏点の前に比例限界があり、降伏点はしばしば顕著な降下や塑性流動を伴います。設計では降伏強さを安全限界として扱うことが多く、降伏挙動は材料選定と成形プロセスに重要です。
Q2 : 繊維強化複合材料で繊維が荷重方向に完全に配向し、等ひずみ(isostrain)が成立する場合の複合材料の等価ヤング率Ecの式はどれか? 1/Ec = Vf/Ef + Vm/Em(逆則) Ec = (Ef*Em)/(Vf*Em + Vm*Ef) Ec = Vf*Ef + Vm*Em(ボイト則、平行則) Ec = sqrt(Vf*Ef^2 + Vm*Em^2)
繊維が引張方向に完全に配向し、繊維と母材が同じひずみを受ける等ひずみ状態(Voigtモデル)では等価ヤング率は体積分率に応じた加重平均で与えられます。すなわち Ec = Vf·Ef + Vm·Em(Vfは繊維の体積比、Vmは母材の体積比)。これは荷重が各相にその体積比で配分される場合に成り立ちます。逆に等応力(Reuss)条件では逆則が用いられます。
Q3 : 弾性波(縦波)が細長い棒を通って伝わるときの波速vはどの物性値に依存するか? v = sqrt(G/ρ)(せん断弾性率による) v = sqrt(K/ρ)(体積弾性率による) v = sqrt(1/(ρE))(誤) v = sqrt(E/ρ)(ヤング率による)
細長い棒の軸方向に伝わる縦波(ロングチューブや線形弾性棒の一次近似)では波速は弾性係数と密度の比で決まり、固体棒の場合簡略的に v = sqrt(E/ρ) と表されます。ただし断面や境界条件、ポアソン比の影響を厳密に含めると修正項が入ることがあります。一方せん断波や体積波ではそれぞれGやKに依存する波速式が用いられます。
Q4 : 線形弾性材料における単位体積当たりのひずみエネルギー密度(弾性エネルギー)は応力σとひずみεの組合せでどの式で表されるか? u = 1/2 σ ε u = σ ε(正解ではない) u = σ^2 ε u = 1/2 E σ^2
線形弾性体では単位体積当たりの弾性ひずみエネルギー密度uは積分 u = ∫_0^ε σ dε であり、フックの法則σ=Eεを用いると u = 1/2 E ε^2 = 1/2 σ ε = 1/2 σ^2/E のいずれかの形で表せます。最も一般的な形はu=1/2 σεで、応力とひずみの積の半分が蓄えられる弾性エネルギー量を示します。設計ではエネルギー吸収や損傷基準に用いられます。
Q5 : 粘弾性材料において「クリープ(creep)」とはどの現象か? 一定ひずみ下で時間とともに応力が減少する現象 一定応力下で時間とともにひずみが増加する現象 荷重を取り除いたときにすぐ元に戻る完全弾性の振る舞い 周波数に依存しない弾性挙動
クリープは一定応力(静的荷重)を作用させたまま保持すると、時間経過とともにひずみが増大する現象です。粘弾性材料や高温下の金属などで顕著で、短期的には弾性変形+速やかな塑性または遅い粘性流動が重なるため、長期耐久設計や変形制御に重要です。対照的に応力緩和は一定ひずみ下で応力が時間とともに低下する現象であり、モデル(Maxwell/Voigt等)で解析されます。
Q6 : ヤング率(Young's modulus)Eは何を表すか? 引張応力と縦方向ひずみの比(σ/ε) せん断応力とせん断ひずみの比(τ/γ) 体積ひずみに対する体積応力の比(K) 材料の降伏強さ(塑性開始点)
ヤング率Eは線形弾性領域における軸方向の剛性を表し、応力σと工学ひずみεの比E=σ/εで定義されます。単位はパスカル(Pa)で、固体材料の引張・圧縮に対する抵抗の尺度です。小ひずみ・線形域にのみ適用可能で、大ひずみや非線形挙動、せん断・体積変形を直接表すものではありません。たとえば同じ応力でも高いEを持つ材料はひずみが小さく、剛性が高いと評価されます。
Q7 : ポアソン比νに関する記述として正しいのはどれか? 0から0.5の範囲にあることが多い 等方線形弾性体の場合理論的には−1<ν<0.5の範囲にある νは常に正である(負にはならない) ν=1の材料は安定である
ポアソン比νは軸方向の伸びに対する横方向の縮みの比で、等方線形弾性体の安定性条件と弾性定数の正定性から理論的境界は−1<ν<0.5です。多くの金属は約0.2〜0.35ですが、負のポアソン比(auxetic材料)も存在します。ν=0.5は非圧縮性(体積保存)を意味し、それ以上は熱力学的に不安定であり、ν=1は現実的ではありません。
Q8 : 等方線形弾性体における体積弾性率(バルク率)Kとヤング率E、ポアソン比νの関係として正しい式はどれか? K = E/(2(1+ν)) K = E/(1-2ν) K = E/[3(1-2ν)] K = 3E/(1+ν)
等方線形弾性体では三つの独立した弾性定数のうち任意二つから他を導けます。ヤング率Eとポアソン比νからバルク率KはK = E/[3(1−2ν)]で与えられます。これは応力が等方的に加わったときの体積変化に対する抵抗を表します。νが0.5に近づくと(非圧縮性に近づくと)Kは非常に大きくなり、体積変化が困難になります。
Q9 : せん断弾性係数(剛性率)Gとヤング率E、ポアソン比νの関係として正しい式はどれか? G = E/(3(1-2ν)) G = E/(1+ν) G = 3E/(2(1+ν)) G = E/[2(1+ν)]
等方線形弾性体におけるせん断弾性率G(剛性率)はヤング率Eとポアソン比νから G = E/[2(1+ν)] と表されます。これは物体がせん断力を受けたときの角変形に対する抵抗を表す定数で、例えばトルクやねじり、せん断応力の解析で用いられます。Eとνの値からGを計算することで、せん断変形に関する力学解析が可能になります。
Q10 : ゴム(エラストマー)の弾性の主因として一般に正しいのはどれか? エントロピーの変化に由来する弾性(エントロピー弾性) 共有結合の伸縮エネルギーが主因である イオン結合やファンデルワールス力の破壊と再配列が主因である 塑性変形により元の形状に戻ることが主因である
天然ゴムや多くのエラストマーの弾性は主に高分子鎖の配向・ランダムコイル状態からの回復に伴うエントロピー減少とそれに対する自由エネルギーの変化に由来します。引張で鎖が伸びるとエントロピーが下がり、解放すると再びランダムな配向に戻ろうとする力が生じます。したがってゴムの弾性はエネルギー的というより統計的・エントロピー的な起源を持ち、金属の弾性(格子間ポテンシャルによる)とは機構が異なります。
まとめ
いかがでしたか? 今回は弾性クイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回は弾性クイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。