カルシウムは生命体にとって必要不可欠な重要な元素です。骨や歯の形成、筋収縮、神経伝達、血液凝固など、様々な生理機能に関与しています。そのカルシウムについて、基礎的な知識を問う10問のクイズをご用意しました。電子配置や生理的役割、吸収メカニズム、疾患との関連など、カルシウムの特性について理解を深めていただければと思います。ぜひ挑戦してみてください。
Q1 : 外来患者における高カルシウム血症のもっとも一般的な原因はどれか?
外来で遭遇する高カルシウム血症の最も一般的な原因は原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism)です。副甲状腺腫瘍や過形成によりPTHの分泌が亢進すると骨吸収や腎での再吸収が増し、血中カルシウムが上昇します。悪性腫瘍関連の高カルシウム血症は入院患者や進行がん患者では頻度が高いですが、一般外来では原発性副甲状腺機能亢進症が最も多いとされます。臨床では血中PTH、リン、ビタミンD、尿中カルシウム排泄などで鑑別します。
Q2 : カルシウム補充に用いるカルシウム炭酸塩(カルシウムカーボネート)に関する記述として正しいのはどれか?
カルシウム炭酸塩は元素カルシウム含有量が比較的高く(おおむね40%程度)安価である一方、吸収には胃酸の存在が必要です。そのため空腹時より食後に摂取したほうが胃酸が分泌され、吸収が向上します。胃酸分泌が低下している(高齢者やプロトンポンプ阻害薬使用者)場合は、酸を必要としないカルシウムシトレートが推奨されることがあります。副作用としては便秘やガスが出やすいことがあり、過剰摂取は高カルシウム血症や結石リスクを増す可能性があります。
Q3 : 骨吸収を主に担い、酸性の吸収窩を形成して骨基質を溶かす骨細胞はどれか?
骨を溶かして再吸収を行う主要な細胞は破骨細胞(osteoclast)です。破骨細胞は単球・マクロファージ系から分化し、骨表面に付着してプロトンポンプや酸性タンパク質を使い局所を酸性化してハイドロキシアパタイトを溶解し、さらにカテプシンKなどの酵素で有機基質(コラーゲンなど)を分解します。破骨細胞の分化と活性はRANK/RANKL/OPG系やPTHの影響を受け、細胞内カルシウムシグナルや転写因子によって制御されます。
Q4 : 原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)と家族性低尿性高カルシウム血症(FHH)を鑑別する際、FHHで典型的に低値を示すのはどの検査か?
FHHはカルシウム受容体(CaSR)の不活性変異による常染色体優性疾患で、血中カルシウムは高値だが尿中カルシウム排泄が低い(しばしば尿中カルシウム/クレアチニンクリアランス比<0.01)という特徴があります。一方、原発性副甲状腺機能亢進症では尿中カルシウム排泄は通常高めか正常であり、鑑別には尿中カルシウム排泄の評価が有用です。血中PTHは両者で正常高値~高値となることがあり、遺伝学的検査や家族歴も診断に役立ちます。
Q5 : 骨の無機成分として主要であり、硬さと強度を与える骨の主成分は次のうちどれか?
骨の主成分はハイドロキシアパタイト(化学式の一例: Ca10(PO4)6(OH)2)であり、これはカルシウムとリン酸が結合してできたリン酸カルシウムの一種です。ハイドロキシアパタイトは骨や歯の無機マトリックスを構成し、組織に硬さと機械的強度を与える役割を果たします。骨は有機成分(主にコラーゲン)と無機成分(ハイドロキシアパタイト)が複合しており、このバランスが骨の弾性と強度を決定します。代謝やホルモン調節(PTH、ビタミンD、カルシトニン等)により骨のリモデリングが行われ、ハイドロキシアパタイトの沈着・溶解が制御されます。
Q6 : 活性型ビタミンD(カルシトリオール、1,25-ジヒドロキシビタミンD)を最終的に生成する主な臓器はどれか?
ビタミンDの活性化は段階的に行われます。皮膚での紫外線作用によりコレステロールからビタミンD3(コレカルシフェロール)が生成され、肝臓で25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)に代謝されます。最終ステップは腎臓で行われ、1α-ヒドロキシラーゼにより1,25-ジヒドロキシビタミンD(カルシトリオール)に変換されます。腎でのこの変換は副甲状腺ホルモン(PTH)やリン、FGF23などにより調節され、カルシトリオールは腸管からのカルシウム吸収を促進し、骨代謝や血中カルシウム濃度の維持に重要です。
Q7 : 食物からのカルシウム吸収(生体利用率)が最も高いと一般にされている食品群はどれか?
一般に牛乳や乳製品はカルシウムの生体利用率が高いことで知られています。乳製品中のカルシウムは比較的吸収されやすく、消化管からの吸収率はおおむね20〜30%程度とされます。一方、ほうれん草などは総カルシウム量は多く見えることがあるものの、シュウ酸などの阻害因子により吸収率が低くなります。アーモンドなどナッツはリン酸やフィチン酸によりやや吸収が阻害されることがあり、大豆製品は製法や含有成分により吸収率が変わりますが、総合的には乳製品が安定して高い吸収性を示すため代表的な良好なカルシウム源です。
Q8 : 血液凝固において、カルシウムイオン(Ca2+)が歴史的に指す凝固因子番号はどれか?
血液凝固系では古典的な因子番号付けがされており、カルシウムイオン自体は歴史的に「因子IV」と呼ばれてきました。カルシウムイオンはビタミンK依存性の凝固因子(II、VII、IX、Xなど)が負に帯電した膜表面に結合するために必要であり、凝固カスケードの複数段階で不可欠な役割を果たします。したがってCa2+の存在は凝固の進行と因子複合体の形成にとって重要であり、抗凝固検査や臨床実践においてもその生理的役割が考慮されます。
Q9 : 小腸でのトランスセルラー(細胞内経由)カルシウム吸収の際、腸管上皮細胞の管腔側(頂端膜)からのカルシウム流入を担う主要なチャネルはどれか?
小腸のトランスセルラー吸収経路では、頂端膜からのカルシウム流入にはTRPV6という非選択的カチオンチャネルが主要な役割を果たします。頂端膜で取り込まれたCa2+は細胞質内でカルビンジンなどのCa結合タンパク質に結合して移送され、基底側膜ではPMCA1b(Ca2+-ATPアーゼ)やNCX1(ナトリウム・カルシウム交換体)によって血側へ排出されます。TRPV6の発現は活性型ビタミンD(カルシトリオール)によって誘導され、ビタミンDは腸からのカルシウム吸収を増強する主要なメカニズムの一つです。
Q10 : 原子番号20を持ち、アルカリ土類金属に分類される元素カルシウムの電子配置(基底状態)はどれか?
カルシウム(Ca)は周期表で原子番号20の元素で、基底状態の電子配置は希ガスであるアルゴン(Ar)の電子配置に4s軌道に2個の電子が付加された形、すなわち[Ar]4s2です。これによりカルシウムは第4周期の2族(アルカリ土類金属)に属し、価電子が2個であるため典型的な2価の陽イオン(Ca2+)を形成しやすく、化合物中では+2の酸化数を取ることが多いという性質があります。原子番号や電子配置は元素の化学的性質を理解する上で基本的な情報であり、カルシウムが骨や歯、細胞内外のシグナル伝達など生体内で重要な役割を担う理由の一端にもなっています。