新しい文学批評の潮流を問うクイズにお答えします。新批評、形式主義、構造主義、脱構築、読者反応批評、オーター理論、記号論、新歴史主義、インターテクスチュアリティ、解釈学的円環といった20世紀の主要な文学理論の基本的な考え方や重点を問う10問を収録しています。これらの理論は文学作品の解釈や評価に大きな影響を与えてきました。本クイズを通して、これらの理論の特徴や相互の関係を確認し、文学テクストの理解を深めていただければと思います。様々な視点から文学作品を読み解く面白さを発見してください。
Q1 : 「インターテクスチュアリティ(相互テクスト性)」の概念を端的に表すものはどれか?
インターテクスチュアリティはジュリア・クリステーヴァが用いた言葉に由来し、ミハイル・バフチンの対話論とも関連して、あるテクストが他のテクストを引用・参照・改変・変奏することで意味を獲得し、単独では完結しない関係性のネットワークの中で理解されるという考えです。引用や暗示、模倣、改作などを通じて作品同士が互いに影響し合い、新たな意味を生成する点が核心です。したがってテクスト間の参照関係が本質を説明します。
Q2 : 解釈学における「解釈学的円環(hermeneutic circle)」が示すのはどのような理解の過程か?
解釈学的円環とは、部分の理解が全体の理解を前提にし、同時に全体の理解が部分の理解に基づくという相互依存的で循環的な理解の過程を指します。シュライアマハーやガダマーらの伝統において、読解は単線的ではなく、再読や文脈の再評価を通じて理解が深化していく動的プロセスとされます。この円環的運動は解釈の閉鎖を示すのではなく、理解の進展と修正の可能性を示す概念です。
Q3 : 構造主義(structuralism)の立場で意味が生じる主なメカニズムとして正しいのはどれか?
構造主義はソシュールの言語学に起源をもち、記号(sign)は恣意的であり、その意味は個々の記号が独立して存在するからではなく、体系(ラング)内で他の記号との差異によって生じると考えます。人類学のレヴィ=ストロースや文学の構造主義的分析でも、要素間の相互関係や規則性、差異のネットワークが意味生成の鍵とされます。したがって「要素間の差異」によって意味が形成される、という選択肢が構造主義の核心を的確に示します。
Q4 : ジャック・デリダの「脱構築(deconstruction)」が批判的に注目するのはどの点か?
デリダの脱構築は、テクストや思想に内在する二項対立(中心/周縁、真理/偽り、存在/欠如など)を問い直し、その対立が前提としている優位性や固定化された意味を揺さぶる方法論です。différanceや跡の概念を通じて、意味が常にずれ、完全な確定に至らないことを示し、読みの複数性やテクストの自己矛盾を明らかにします。したがって二項対立の解体を通じて意味の不確定性を露わにする、という答えが妥当です。
Q5 : 読者反応批評(Reader-Response Criticism)が特に重視するのはどれか?
読者反応批評は、テクストの意味を固定的にテクスト内部に求めるのではなく、読むという行為そのもの、すなわち読者がテクストと関わる過程で生まれる理解や経験を重視します。Stanley FishやWolfgang Iserらの議論に見られるように、読む共同体や読者の期待、読みの戦略が解釈に影響を与えるとし、テクストの多義性や読者ごとの読みの可能性を分析します。従って「読者が構築する意味」が中心となります。
Q6 : 映画批評におけるオーター(auteur)理論とは何を主張するか?
オーター理論はフランスの『カイエ・デュ・シネマ』の批評やフランソワ・トリュフォー、そしてアンドリュー・サリスなどによって広められ、監督(director)を映画の「作者」とみなし、作家性(スタイル、テーマ性、技法の一貫性)を通じて作品群を読み解く立場です。脚本や制作条件の影響を認めつつも、最終的な芸術的統一性や繰り返される主題・映像語法などにより監督の創造的な個性が表れるとされます。よって監督を作者と見る選択肢が正解です。
Q7 : ソシュール的記号論における「能記(signifiant)」と「所記(signifié)」の関係について正しい説明はどれか?
ソシュールの記号論では、記号は能記(signifiant:音声・文字の表現面)と所記(signifié:その概念的内容)から成り立ち、両者の結びつきは本質的に恣意的(arbitrary)であるとされます。意味は個々の記号が他の記号とどのような差異を持つかによって生じるため、単独の語や形態がそれ自体で固定的な意味を持つわけではありません。記号体系内の関係性と差異が意味生産の中心にある点が重要です。
Q8 : 新歴史主義(New Historicism)の文学研究で重視される読み方として適切なのはどれか?
新歴史主義は1980年代以降にStephen Greenblattらにより代表される潮流で、テクストを単に歴史の産物と見るのではなく、当時の文化的・政治的・権力関係とテクストが相互に作用し合う場(cultural formation)として読み取ることを主張します。権力・知識・主体形成の問題を重視し、文学と非文学的資料を並置して同時代の言説を分析する点が特徴です。したがってテクストを文化的・権力的文脈で読むことが適切です。
Q9 : 新批評(New Criticism)が文学作品の評価で主に重視したのはどれか?
新批評は作品の外的条件(作者の伝記や歴史的背景、読者反応など)を重視せず、テクストそのものの言語、構造、比喩や象徴といった形式的要素を精緻に読み取る「クローズリーディング」を重視した立場です。W. K. Wimsattの『The Intentional Fallacy』やCleanth Brooksらの議論に見られるように、意図的誤謬や歴史的判断の排除を通じて、テクストの内部的整合性と意味生成過程を分析することが新批評の中心的な方法論であり、テクストの自律性を前提に解釈を行います。上述の点から、最も適切なのは「テクスト内部の形式や構造」です。
Q10 : ロシア形式主義が提唱した「陌生化(ostranenie)」の考え方は何を意味するか?
ロシア形式主義、とくにヴィクトル・シュクロフスキー(Shklovsky)が提唱した「陌生化(ostranenie)」は、芸術が日常的で慣れきった知覚を新たにし、言語や表現を通じて読者・観客に新鮮な感覚をもたらす手続きを指します。文学の「文学性(literariness)」はこうした技法の結果として成立するとされ、物語の素材そのものよりも、それをどのように語るか(形式的処理)が問題とされます。したがって、日常性を逸脱させるという選択肢が該当します。