本阿弥光悦作『舟橋蒔絵硯箱』において、橋桁や岸辺を半立体的に盛り上げるために用いられた主たる蒔絵技法はどれか?
『舟橋蒔絵硯箱』は桃山―江戸初期の漆芸を代表する逸品で、橋梁や遣水を高蒔絵で厚盛りし、その上に金銀粉と螺鈿を配置することで豪華な景観を構成している。高蒔絵は漆に砥粉などを混ぜた盛り漆を何層にも重ね、立体的な起伏を作る技法で、光悦の書の流麗さと相まって独特の躍動感を生む。沈金は線彫りに金箔を擦り込む技法、根来塗は朱黒の摩耗表現、変塗は斑模様の塗面であり、本作の厚盛り表現とは異なる。光悦の多才さを示すと同時に、江戸初期蒔絵の技術的頂点を示す作例である。