日本の伝統的な切り絵と、ユネスコ無形文化遺産に登録された中国の紙切り文化。その違いやアーティストたちの作品世界など、切り絵の魅力に迫る10問のクイズをお楽しみください。切り絵は繊細で美しく、手作りならではの温かみを持ち合わせた素晴らしい伝統工芸です。この機会に、その魅力を探ってみませんか。
Q1 : 影絵芝居などに用いられる黒い紙の切り絵は、とくに何と呼ばれることが多い?
シルエットは18世紀フランスの財務官エティエンヌ・ド・シルエットが影絵風の肖像を好んだ逸話にちなみ、輪郭だけで対象を表す手法全般を指す言葉として定着した。日本では黒い紙で人物や動物を切り抜き、光を当てて映す影絵やランプシェード装飾にこの言葉が使われる。彩切りは彩色切り絵の総称、白絵は木版技法、ネガ切りは写真のネガに例えた俗称であるため、影絵向きの黒紙切り絵の呼称として正解はシルエットである。
Q2 : 三重県鈴鹿市白子を中心に作られ、着物の染色用の型紙として全国に流通した細密な紙の切り型を何と呼ぶ?
伊勢型紙は和紙を柿渋で貼り合わせた丈夫な台紙に、突き彫りや道具彫り、縞彫りなどの技法で極細の文様を切り抜いた染色型紙。江戸時代から浴衣、友禅、小紋などの模様付けに欠かせず、紙とは思えぬ耐久性と再現性が評価された。白子地区の職人が発達させたため地名が名称となり、2013年には国の重要無形文化財保持団体に認定。庄内型紙は実在せず、越前和紙は紙素材、加賀雛形は図案集である。
Q3 : 切り絵用の和紙として人気が高く、墨色の深さと繊維の強さから細かい図案でも破れにくいとされる紙はどれ?
雁皮紙はガンピ科植物の繊維を原料とし、光沢と半透明性を併せ持つ高級和紙。繊維が長く密で、刃を入れても毛羽立ちにくいので線幅の細い切り絵でも破損しにくい。墨の発色が深く、黒一色作品に重厚感を与える効果もある。奈良晒は麻の漂白技法、津軽和紙は厚手で素朴、友禅紙は多色印刷を施した装飾紙であり、本問が求める“強靭かつ墨映えする紙”の特徴に合致するのは雁皮紙のみである。
Q4 : フランス語の「紙を切る」という意味に由来し、近代以降西洋で発展した彩色切り絵の総称はどれ?
デコパージュはフランス語découper(切る)が語源で、印刷紙や絵柄紙を切り抜き、木箱やガラスに貼り重ねてニスで定着させる装飾技法。18世紀のヨーロッパで家具装飾として流行し、20世紀にはアンリ・マティスが“切り紙絵”として芸術表現に高めた。コラージュは素材貼り合わせ全般、リトグラフは石版画、フロッタージュはこすり出し模写であり、用語の由来と内容両面から正解はデコパージュとなる。
Q5 : 切り絵を量産する目的で図案を正確に複数枚の紙に写す際、最も一般的に使われる補助材料はどれ?
トレーシングペーパーは半透明性を活かし、原図を透かし見ながら線を写し取れるため、切り絵教室やプロの現場で図案複製の定番となっている。写した線の裏に黒鉛を擦り、目的の台紙に重ねてなぞればカーボン紙代わりに転写でき、同じデザインを短時間で多数作成可能。水干絵具は彩色用顔料、硯押しは書道で硯面を紙に押し水分を調整する作業、ドリッピングは絵具を垂らす抽象技法であり、本問の用途には適合しない。
Q6 : 切り抜いた紙片を別の色紙の上に糊で貼り重ねて彩りを加える技法を一般に何と呼ぶ?
貼り絵は切り紙やちぎり紙を糊で貼り重ねて画面を構成する技法で、単色のシルエットに模様入りの友禅紙や金箔紙を重ねることで色彩と質感を追加できる。江戸期の浮世絵師も補色用途に用い、現代では保育教材からアート作品まで幅広い。折込は印刷広告、摺色は木版の重ね摺り、灯絵は影絵の一種で光を通して鑑賞する技法であり、複数色紙を貼って仕上げる行為を示す呼称として正しいのは貼り絵である。
Q7 : 日本の伝統的な切り絵と、中国で2009年にユネスコ無形文化遺産に登録された紙切り文化の中国名は、次のうちどれか?
剪紙(ジエンジー)は中国で古来、祝い事や宗教的行事の装飾に用いられてきた赤い切り紙で、窓花や門貼として春節に貼られる習慣が有名。2009年にはユネスコ無形文化遺産に登録され、地域ごとに吉祥文様や影絵的な表現が発達した。日本の切り絵とも起源を共有するが名称は異なり、風水を意味するフェンシュイや刀画(切り抜いた紙に絵具をさす技法)とは混同できないため、正答は剪紙である。
Q8 : 折り紙を折った状態で切り込みを入れ、開いて立体や対称模様を作る派生技法を、日本では何と呼ぶか?
切り紙は紙を折り畳んでから刃を入れ、開いた際に左右対称や放射状の模様が現れる技法で、雪の結晶や連続する人形などが代表例。折らずに一枚の紙を直接切り抜く切り絵とは工程が異なり、欧米ではKirigamiと呼ばれる。版画は版を刷る印刷、鎌倉彫は木工漆芸、透かし彫りは金属や木材に穴を開ける細工であり、問いが示す折ってから切る紙細工を示す言葉は切り紙のみである。
Q9 : 細密なレース状の切り絵作品で知られ、スイスを拠点に活動する日本人アーティストは誰?
青山ひなは極薄の紙を幅1ミリ以下の線で残しながら一枚刃の小ばさみだけで切り出す技法を磨き、“ミラクルカッター”の異名で海外メディアにも紹介された。蝶の翅脈や文字を途切れさせずに連続させる緻密さが特徴で、ジュネーブやパリのギャラリーで個展を開催し日本の切り絵を世界に広めている。残りの選択肢に示す人物は切り絵界には実在せず、誤答となる。
Q10 : 切り絵制作で、紙を傷めず細かい曲線を切るためによく用いられる刃物として最も適切なのは?
デザインナイフはペン型の軸に交換式の小刃を装着し、刃幅が狭く先端が鋭角なため力を入れずに方向転換できる。これにより紙繊維を潰さずに鋭い角度や曲線を描け、長時間切り進めても手が疲れにくい。彫刻刀は彫り道具で切断には向かず、裁ちばさみは布用で厚刃、通常の大型カッターは直進向きで細線に不向き。細密さと操作性を兼ね備えた道具としてデザインナイフが最適解となる。
まとめ
いかがでしたか? 今回は切り絵クイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回は切り絵クイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。