熱伝導は私たちの身の回りに存在する重要な物理現象です。この「熱伝導クイズ」では、熱流束、熱拡散率、Biot数など、熱伝導の基本概念について10問のクイズを用意しました。フーリエの法則や金属の熱伝導機構、複合材料の熱抵抗など、熱工学の基礎知識が問われます。熱は高温から低温へ自然に流れる性質を持ち、この性質を理解することは機械設計や材料開発にも欠かせません。クイズを通じて熱伝導の基礎を確認し、身の回りの熱現象をより深く理解する機会になれば幸いです。
Q1 : 平板や複合層の熱抵抗が直列に接続されている場合の全体の熱抵抗R_totの求め方として正しいものはどれか?
熱伝導の直列接続では各層を通る熱流が同一であり、温度差は各層の抵抗に比例して分配されるため全体の熱抵抗は個々の熱抵抗の和R_tot = Σ R_i(通常R_i = L_i/(k_i A))となる。これは電気回路の直列抵抗の合成と同様の扱いで、熱流は一定、温度降下が層ごとに分配される。熱伝導率自体を単純に加算することは意味を成さない。
Q2 : Biot数が非常に小さい(Bi ≪ 1)場合、物体内部の温度分布についてどの記述が正しいか?
Biot数Bi = h L_c / kが小さい(Bi ≪ 1)ということは、内部伝導抵抗が外部対流抵抗に比べて小さいことを意味する。この場合、物体内部はほぼ一様温度となり、温度勾配は小さい。したがって物体全体の温度変化は主に表面での対流熱伝達に支配され、一様温度近似(lumped capacitance法)が適用可能である。逆にBi≫1ならば内部伝導が支配的で内部に顕著な温度勾配が生じる。
Q3 : 円筒の定常放射(径方向)熱伝導における単位長さ当たりの熱抵抗R'(内半径r1、外半径r2、熱伝導率k)はどれか?
円筒(長さL=1の単位長さ)における径方向定常熱伝導の熱抵抗は幾何学的因子により平板とは異なり、R' = (1/(2π k)) ln(r2/r1)で与えられる。これは円筒座標での面積が2π r·Lでrに依存するためで、熱流は円周方向に拡散する。したがって対数項が現れる。選択肢の中でln(r2/r1)/(2π k)が正しく、逆数や線形差分を用いた式は円筒問題の解では誤りである。
Q4 : 金属において熱伝導率kと電気伝導率σの間に成り立つウィーデンホーフ・フランツ則(Wiedemann–Franz law)は概ねどのような関係を示すか?
ウィーデンホーフ・フランツ則は金属における電子による熱伝導と電気伝導の比が温度に比例することを示す経験則であり、一般形はk/σ = L0 Tで表される。ここでL0はローレンツ数と呼ばれる近似的定数(理想自由電子モデルから導かれる値)で、Tは絶対温度である。この関係は自由電子支配の温度領域でよく成り立ち、電気伝導率が高い金属ほど熱伝導率も高い傾向があることを説明する。>
Q5 : 金属における熱伝導の主要な担体は何か?
金属では自由電子が熱エネルギーを運搬する主要担体である。導電性が高いほど自由電子の寄与が大きく、電子の移動により熱が効率よく伝わる。これを反映して、金属では電気伝導率と熱伝導率に相関が見られ、ウィーデンホーフ・フランツ則(Wiedemann–Franzの関係)により電子支配の寄与が説明される。一方、絶縁体やセラミックスではフォノンが主要担体となる。光子は通常高温・真空中で重要になるが、常温固体中では支配的ではない。
Q6 : 厚さL、単位面積あたりの熱抵抗(単位面積を基準にした面積当たり抵抗)の式として正しいものはどれか?
熱抵抗を単位面積あたり(面積1 m2あたり)で表す場合、熱流束qと温度差ΔTの関係はΔT = (L/k) qとなる。したがって単位面積あたりの熱抵抗はR' = L/kとなる。ここでLは板厚、kは熱伝導率であり、面積を考慮しないので単位はm2·K/WではなくK·m2/Wに対応する。全体の熱抵抗を面積Aを含めて表す場合はR = L/(kA)となるが、設問は単位面積当たりを問うているためL/kが正しい。
Q7 : 生熱伝導問題で用いられるBiot数Biの定義として正しいものはどれか?
Biot数は表面伝熱に伴う外部対流抵抗と物体内部の伝導抵抗の比を表す無次元数で、定義はBi = h L_c / kである。ここでhは対流熱伝達係数、L_cは代表長さ(例えば体積/表面積)、kは材料の熱伝導率である。Biが小さい(≪1)と内部の温度がほぼ一様で内部抵抗が小さく、表面での対流が支配的であることを示す。逆にBi≫1では内部伝導抵抗が重要になる。
Q8 : 熱拡散率(thermal diffusivity)αの役割として正しいのはどれか?
熱拡散率αはα = k/(ρ c_p)で定義され、熱の伝導と蓄熱の比を表す。αが大きい物質は熱が速く拡散し、外部条件の変化に対して温度が早く均一化する。ρ c_pは単位体積あたりの熱容量で、これが大きいと同じ熱伝導率でも温度変化が遅くなるためαは小さくなる。したがってαは物質固有の時間スケールを決め、境界条件や形状にも影響を受けるが、定義自体は材料物性値から決まる。
Q9 : 偏微分方程式の境界条件のうち、ノイマン境界条件(Neumann condition)はどのような物理量を指定するか?
ノイマン境界条件は境界上での法線方向の温度勾配(∂T/∂n)またはそれに対応する熱流束q_nを指定する条件である。物理的には外部からの加熱や断熱(熱流束=0)などがこれに相当する。一方、境界で温度そのものを指定するのがディリクレ(Dirichlet)条件、温度と熱流束を組み合わせたもの(例えば対流による境界)はロビン(Robin)条件と呼ばれる。
Q10 : 1次元定常熱伝導に関するフーリエの法則として正しい式はどれか?
フーリエの法則は熱流束(単位面積あたりの熱流量)qが温度勾配の大きさと方向に反比例することを示し、一次元ではq = -k dT/dxで表される。ここでkは熱伝導率、マイナス符号は熱は高温から低温へ流れることを示す。ベクトル形式ではq→ = -k ∇Tであり、単位はW/m2。2階微分や時間微分を直接用いるのは拡散方程式など異なる文脈であり、符号が正の表現は物理的符号規約に反するため誤りである。