チップチューンの魅力を味わえるクイズをお届けします。ファミコンやメガドライブといった初期ゲーム機の音源チップから、トラッカー型作曲ツールまで、チップチューンの歴史と技術を振り返る10問です。1980年代から90年代にかけて発展したこのジャンルの代表的な音源や楽曲制作手法について、サウンドの特徴や仕組みを深く掘り下げていきます。音楽ファンはもちろん、ゲームミュージックや音楽制作に興味のある方も、きっと新しい発見があるはずです。チップチューンの魅力を存分に楽しめる内容となっています。
Q1 : ファミコン/NES向けのトラッカーで、DPCMサンプルや多彩な拡張チップのエミュレーションをサポートし、PC上でNESサウンドを作成できるツールはどれか?
正解はFamitrackerです。FamitrackerはWindows向けのトラッカーで、NES(ファミコン)のAPUを詳細にエミュレートして作曲できるツールです。矩形波、三角波、ノイズに加えてDPCMサンプルの扱いや、VRC6・VRC7・MMC5などの拡張サウンドチップのエミュレーションもサポートしており、実機での再生を意識した音作りができます。チップチューン制作者の間で標準的に使われるソフトウェアであり、NSF書き出しなども可能です。
Q2 : スーパーファミコンの音源で、専用のサブCPUとADPCMサンプル再生を担当し、チャンネルごとにエフェクト処理が可能な音声プロセッサはどれか?
正解はSPC700です。SPC700はスーパーFamicom/SNESに搭載された音声用プロセッサで、Sonyが設計しました。本体とは独立した8ビットのサブCPUであり、BRR圧縮(ADPCMに近い)されたサンプルを扱って多チャンネルの再生やボリューム・パンニング・フェードなどの制御を行います。これに専用のDSPが組み合わされ、リバーブ等のエフェクト処理が可能で、サンプルベースのリッチな音楽表現を実現していた点が特徴です。
Q3 : 初期のチップチューン/デモシーンで広く使われた「アルペジオ(高速に音を切り替えて和音を表現する効果)」は、トラッカーにおいてどのように実現されることが多いか?
正解は「1つのチャンネル内でノートを高速に切り替えて和音を表現する(アルペジオ)」です。トラッカー系のチップチューンでは、ハードウェアの声数制限を補うために1つの音声チャンネル内で短い間隔で複数の音程を切り替え、聞き手には和音として知覚させるテクニックが一般的です。これをアルペジオ効果と呼び、パターン内でピッチを指定して非常に短い間隔で音程を交互に出すことでメロディと和音を同時に表現します。音色や速度の設定で和音の響き方が変わるため、楽曲の表現において重要な手法となっています。
Q4 : チップチューン制作でよく用いられるトラッカーフォーマットの一つで、サンプルをBRRのように圧縮して保存するなどしてSNES音源と親和性が高いファイル形式はどれか?
正解はSPC形式です。SPCはSNESのサウンドエミュレーションや保存に使われる形式で、実機のSPC700とDSPの状態、メモリ上のサンプルや再生テーブルなどをダンプして再生可能にしたものです。BRR圧縮されたサンプルやチャンネル設定など、SNES独自の再生方式をそのまま保存できるため、SNES音源の楽曲を忠実に再生・解析する用途で広く使われています。エミュレータや専用プレイヤーでの再生が一般的です。
Q5 : チップチューンでよく使われる「DPCM(差分PCM)」再生機能を持ち、ドラムやボイスなどの短いサンプル再生に利用されるNESのAPUの特殊チャンネルの名前はどれか?
正解はDMC(Delta Modulation Channel)、いわゆるDPCM再生を担うチャネルです。NESのAPUには矩形波や三角波、ノイズに加えてDMCと呼ばれるサンプル再生専用の機構があり、BRRではなく差分PCM的な方式でメモリからサンプルをストリーミング再生します。メモリ使用量と再生レートに制限がありますが、ドラムや効果音、短いボイスを加えるのに重宝され、ファミコンタイトルやチップチューンでも効果的に利用されてきました。
Q6 : NESの楽曲データをエミュレートして再生するために広く使われるフォーマットで、6502系のサウンドドライバーコードと音データを含み、NSFプレイヤーで再生できる形式はどれか?
正解はNSF(Nintendo Sound Format)です。NSFはNES/Famicomの音楽データを保存するためのフォーマットで、サウンドドライバ(6502系のサブルーチン)と音データ、メタデータを含みます。NSFプレイヤーやエミュレータはこの情報を読み込み、内部的にAPUの動作をエミュレートして楽曲を再生します。ゲームから楽曲をリッピングしてNSF化することで、オリジナルの音源挙動を忠実に再現して聴くことが可能になります。
Q7 : ファミコンや初期ゲーム機の音源で知られ、アナログのローパスフィルタを搭載していることで有名なチップはどれか?
正解はMOS 6581 SIDです。SIDはMOS Technologyが開発したCommodore 64向けの音源チップで、3声の音源と矩形・三角・ノイズ・のこぎり形波などを生成できるほか、アナログの可変ローパスフィルタを備えている点が特徴です。設計上フィルタ回路がチップごとに個性を生み、同じプログラムでも音色の差が出やすいことがSIDサウンドの魅力となっています。多くのC64用ゲームやデモシーンの作曲で使われ、チップチューン文化における代表的な音源として現在も人気が高いです。
Q8 : Game Boy上で動作し、パターンベースのトラッカーインターフェースを持ち、専用カートリッジとしても配布される有名なチップチューン作曲ソフトはどれか?
正解はLSDJ(Little Sound DJ)です。LSDJはGame Boyの内蔵音源を直接操作するトラッカー型ソフトで、4音声(2つの矩形波、波形(波形メモリ)、ホワイトノイズ)を活用してメロディやベース、ドラムなどを構築します。カートリッジやエミュレーションで動作し、持ち運べる作曲環境としてライブにも適しているため、Chipzelなど多くのアーティストに愛用され、現代のチップチューンシーンにおいて標準的なツールの一つとなっています。
Q9 : チップチューンやデモシーンで、サンプルベースのモジュール形式としてAmigaで広まり、パターン・サンプル・サンプリングベースの再生を行う形式は次のうちどれか?
正解はMOD形式です。MODはAmiga向けに開発されたモジュール形式の総称で、もともとはUltimate Soundtrackerやその後継のProTrackerなどから始まりました。サンプルデータとパターンデータを組み合わせて曲を表現し、初期のAmiga機は4チャンネルのハードウェア再生を特徴としていました。MODはデモシーンや初期のPCゲーム音楽で広く利用され、その後のS3M/XM/ITといった拡張モジュール形式の基礎となった歴史的なフォーマットです。
Q10 : FM合成を主要な方式として用い、6音声を持ち、セガのメガドライブ/ジェネシスに搭載された音源チップはどれか?
正解はYamaha YM2612です。YM2612はヤマハ製のFM音源チップで、セガのメガドライブ/ジェネシスに採用されました。通常6つのFM音声を備え、金属的なカッティングやリッチな倍音表現に優れたサウンドが得られます。さらにこのチップは1チャネルをPCM出力に利用できるため、サンプルの再生も可能で、それが楽曲の表現を拡張する要素となっていました。多くのメガドライブタイトルで独特のFMサウンドが特徴となっています。