詩吟は日本の伝統的な朗詠芸能で、古典から近代詩までの名作を声の調子や韻律に合わせて優雅に吟じ上げる。そのクイズを10問ご用意しました。作品の作者や吟唱の技術、関連する楽器など、詩吟のエッセンスを問う内容になっています。クイズを通して、この魅力的な伝統芸能のいくつかの側面に触れていただければ幸いです。
Q1 : 『偶成』で「少年老い易く学成り難し」と詠んだ南宋の儒学者は誰か。
朱子こと朱熹は南宋時代の儒学者で、新儒学としての朱子学を体系化した人物。偶成は短い七言絶句で「少年老易学難成 一寸光陰不可軽」と時間の貴さを諭す内容が詩吟教材として人気である。王陽明は心学派、欧陽脩は北宋の文人、杜牧は晩唐の詩人でいずれも別作品を残すが偶成の作者ではない。吟じる際は平調子から徐々に昇調子へ移り警句の切迫感を声で表す。
Q2 : 詩吟伴奏に用いられる竹製の縦笛で主流となっている楽器はどれか。
尺八は竹製の端吹き縦笛で、古来禅僧の吹禅や地歌箏曲で用いられてきた。近代以降は詩吟伴奏にも取り入れられ、低音から高音への豊かな音域と独特の息音が吟声を引き立てる。琵琶や箏も詩吟舞台での合奏に用いられる例はあるが専属伴奏楽器としては尺八が主流で、笙は雅楽用。尺八奏者は吟者の呼吸に合わせ即興的に間合いを作りドラマ性を高める役割を担う。
Q3 : 詩吟で親しまれる『奥の細道』序文を著した人物は誰か。
松尾芭蕉は江戸時代の俳諧師で、奥の細道の序文は詩吟でも伝統的に吟じられる人気の散文。本序では旅立ちの心持ちを格調高い文語で綴り「月日は百代の過客にして…」と始まる。与謝蕪村や小林一茶、正岡子規は俳句史上重要だが奥の細道は著しておらず、詩吟でも題材は芭蕉作として扱われる。序文は長文だが呼吸配置が工夫されており中級者の稽古曲に選ばれる。
Q4 : 詩吟の基本となる三調子に含まれない調子はどれか。
詩吟では平調子、昇調子、降調子の三調子が基本型とされ、これらは音の高さと感情表現の違いを学ぶ基盤となる。昇破調子は二上りで始めた後さらに高揚させる応用形であり、古謡の一部では用いられるが三調子の枠外である。設問は含まれないものを問うため正解は昇破調子となる。調子を判別する力は吟士検定でも重視されるため中級者には必須知識となっている。
Q5 : 万葉集の歌『田子の浦ゆ…』を詠んだ歌人は誰か。
万葉集の代表的歌人である山部赤人は富士山や自然景を雄大に詠んだことで知られ、詩吟でも彼の長歌や短歌は定番教材となる。田子の浦ゆ…の歌は富士の雪の白さを感嘆する内容で、平調子から昇調子へ移る構成で朗々と歌い上げられる。柿本人麻呂や大伴家持、額田王も万葉の大家だが当該歌の作者ではない。山部赤人の作品は声に広がりを持たせる練習曲として評価が高い。
Q6 : 豪放な詩風で知られる『将進酒』を作った詩人は誰か。
李白は盛唐を代表する詩仙で、豪放な作風と自在なリズムが詩吟に最適とされる。将進酒は酒を勧め人生の快楽と抱負を高らかに歌う長篇歌行で「君不見黄河之水天上来…」という冒頭が名高い。詩吟では昇調子とゆりの技巧で酒気の昂揚感を表現する。杜甫は憂国の詩を多く残し、王維は静謐な山水詩、白居易は口語詩で庶民的人気を博したが将進酒の作者ではない。
Q7 : 1952年創設で現在公益社団法人となっている詩吟団体はどれか。
公益社団法人日本詩吟学院は1952年に設立され全国に多数の支部と門人を抱える最大級の詩吟団体で、吟士養成や師範認定、全国コンクールの主催など幅広く活動している。全日本吟剣詩舞道連盟は詩舞を含む横断組織、日本吟詠連盟や日本和歌吟詠協会も著名だが設立年や規模の点で条件に合致しない。学院では漢詩から近現代詩まで教材を用意し、段位審査の基準を整えて普及に貢献している。
Q8 : 吟じる直前に打ち鳴らして開始を告げる木製打楽器はどれか。
拍子木は二本一組の角材を打ち合わせる楽器で、稽古場や舞台で吟が始まる直前に三つ打ちなどで鳴らされる。明晰な音は聴衆に開始を告げるとともに吟者自身に調子と間合いを確認させる役目を持つ。銅鑼や太鼓は別の伝統芸能で用いられるが詩吟の所作とは結び付かず、鈴も主に神事で使われる。拍子木の乾いた音は舞台空間に張り詰めた緊張感を生み朗詠の集中力を高めるとされる。
Q9 : 『和漢朗詠集』を編纂した平安時代中期の人物は誰か。
和漢朗詠集は平安中期の公卿藤原公任が1008年頃に編み、和歌と漢詩を四季や賀寿などの部立てで配列した秀逸なアンソロジーである。詩吟では漢詩部に収められた名句が教材として重用され、詩語の格調と韻律を学ぶ格好の素材となる。藤原道長は政治家として栄華を極めたが編者ではなく、藤原定家や頼通も別の時代の人物。朗詠集は後世の朗詠曲や吟詠譜にも影響を与えた。
Q10 : 「春望」を作った唐代の詩人は誰か。
杜甫は盛唐の詩人であり詩聖と称される人物。春望は安史の乱で荒廃した長安の景を背景に国家と家族を思う心を詠んだ代表作で、詩吟では平調子で哀愁を込めて吟じられることが多い。李白は同時代の詩仙として知られるが本作の作者ではなく、白居易や王之涣も別の名作で名高いのみである。春望の四句は対句も見事で初心者にも発声練習に適し、情景の転換を感じさせる息継ぎや声の高低を学ぶ教材として用いられている。
まとめ
いかがでしたか? 今回は詩吟クイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回は詩吟クイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。