雅楽は日本の伝統音楽の中でも、特に歴史と格式を感じさせる音楽ジャンルの一つです。その多彩な楽器編成や演奏技法、管絃合奏の壮麗な響きは、時代を超えて愛されてきました。本クイズでは、そんな雅楽の世界に入り込んでみましょう。笙や鞨鼓、朗詠など、雅楽ならではの楽器や曲目、音楽理論について、10問でお楽しみいただけます。雅楽に詳しい方はもちろん、初めての方も、この機会に雅楽の魅力に触れてみてください。
Q1 : 1955年に国の重要無形文化財保持団体(総合指定)の第1号に認定された雅楽演奏団体はどこ?
昭和30年に制定された文化財保護法による最初期の総合指定で、宮内庁式部職楽部が雅楽の保持団体として認定された。式部職楽部は千年以上にわたり宮廷音楽を継承し、管絃・舞楽・歌物の全レパートリーと演奏技法、装束作法を体系的に保持している点が評価された。京都楽所や奈良雅楽会も古い歴史を持つが地方団体であり、舞楽協会は名称として実在しない。初の国指定保持団体として雅楽保存の中心的役割を担うのが宮内庁式部職楽部である。
Q2 : 笙を演奏する際、開始前に楽人が炭火で楽器全体を温める主な目的は何?
笙の各竹管には金属製の薄いリードが差し込まれており、湿気を帯びると振動が阻害され発音しなくなる。演奏前に炭火や電気コンロの熱で風箱ごと温めるとリードや管内の水分が蒸発し、リードが自由に振動して音が安定する。温度上昇による音程変化は僅かで主目的ではなく、香を染み込ませる作法も存在しない。儀式というより実務的なメンテナンス行為で、舞台袖で笙奏者が火鉢にかざす姿は雅楽の定番光景となっている。
Q3 : 代表曲『越天楽』が所属する舞楽系統は次のうちどれ?
越天楽は平安時代に中国・唐から伝わった管絃合奏曲を母体とする唐楽系の楽曲で、現在も祝賀行事などで盛んに演奏される。打物を伴う舞楽版「越天楽舞」も存在し、その旋律は日本民謡や唱歌に引用されるほど親しまれている。一方、高麗楽は朝鮮半島起源の舞楽、催馬楽は古代歌謡を基にした歌物、朗詠は漢詩を詠唱する声楽曲であり、いずれも越天楽とは系統が異なる。したがって正解は唐楽である。
Q4 : 雅楽楽曲がよく採用する、ゆるやかな序・変化を加える破・テンポが速くなる急の三段法を何と呼ぶ?
序破急は日本の伝統芸能に共通する時間構成で、雅楽では管絃の合奏曲だけでなく舞楽の振付や囃子の構成にも応用される。序では拍が明確でない悠揚たる導入、破では拍が立ち旋律が展開、急では速度と拍が最も緊張し華やかに結ぶ。能楽や茶道などでも用いられるため名称自体は広く知られるが、楽理として三段が均等な長さというわけではなく、曲によって割合や素材の扱いが変化する。よって三段構成の呼称として最も適切なのは序破急である。
Q5 : 舞楽合奏でリズムの中枢を担い、細長いばちで両面を打ちながら立って演奏する小太鼓はどれ?
鞨鼓は直径約30センチの円形胴の両面に皮を張り、奏者が胸の高さに吊るして立奏する。軽快で鋭い音色を持ち、複雑な拍や合図を出すことから舞楽では実質的な指揮者役を担う。鉦鼓は金属皿を打つ打楽器で音色や役割が異なり、笏拍子は木片二枚で拍を示す道具、大太鼓は大型の浅胴太鼓で着座して演奏される。立奏かつ小太鼓で拍を統率するという条件に合うのは鞨鼓のみである。
Q6 : 雅楽の音律体系で、朝鮮半島由来の高麗楽に主として用いられる旋法はどれ?
雅楽の旋法は大きく呂旋と律旋に二分され、唐楽では呂旋が主、高麗楽では律旋が主とされる。律旋は呂旋より終止音の位置が異なり、旋律の進行や和声音型にも特色があるため同じ楽器編成でも雰囲気が大きく変わる。具体的には高麗壱越や高麗双調などが律旋に属し、龍笛の指使いや笙の和音も専用の型がある。平調や黄鐘調は呂旋側の調子名で、高麗楽では基本的に採用されない。したがって高麗楽を特徴づける体系は律旋である。
Q7 : 平安時代に設置され、楽人の教育・編成や楽譜の管理を担当して宮廷雅楽を総轄した官司はどれ?
律令制下で雅楽を司ったのは式部省配下に置かれた楽所で、大学寮の音楽教育機能を継承しつつ正式に独立した機関となった。楽所は楽人を管轄し、舞楽装束や楽器の保守、楽譜の書写、国家的儀礼のための合奏編成など多岐にわたる業務を担当した。式部省自体は上位官庁、内蔵寮は財物管理、蔵人所は天皇の秘書機関で音楽とは無関係である。後世、江戸時代の「楽所頭取」などの語もこの伝統に由来する。ゆえに正解は楽所である。
Q8 : 漢詩の一句を抑揚を付けて詠唱し、管絃伴奏を伴う雅楽の声楽曲種はどれ?
朗詠は平安時代中期に始まったとされる歌物で、唐詩や和漢朗詠集などの詩句に節を付け、一つの旋律型を長く引き伸ばしながら雅楽器が間奏や後奏を付ける。歌詞が一行程度と短いこと、拍の進行がゆるやかで歌詞を伸ばすため独特の幽玄さが生まれる点が特徴である。催馬楽は古代歌謡を基にした別の歌物、声明は仏教声楽、今様は平安末期の流行歌であり、伴奏と詠唱の形態が朗詠とは異なる。したがって正答は朗詠となる。
Q9 : 楽頭などが持ち、打ち合わせて拍と曲の区切りを示す木製の小道具は何と呼ばれる?
笏拍子は堅い木で作った細長い板を二枚組にし、右手で握って打ち合わせることで演奏者に拍を提示する道具で、平安時代に舞楽で用いられた笏に由来する。拍やリタルダンド、曲の終止を示す合図が笏拍子で知らされ、合奏を束ねる役割を果たす。鞨鼓や鉦鼓も拍に関与する打物だが楽器であり、指揮棒的な機能を持つわけではない。小拍子は能楽囃子の術語で雅楽の道具ではない。従って正解は笏拍子である。
Q10 : 雅楽の管楽器のうち、十七本の竹管を束ねて鳳凰が翼を広げたような形をしており、息を吹き込むだけでなく吸うことでも音が出せる和音楽器はどれ?
笙は17本の細長い竹管を円筒状の風箱に立てたリードオルガン型の楽器で、複数の指穴を同時に押さえて和音を鳴らすため雅楽では天上の響きを象徴するとされる。リードが湿ると鳴らなくなるため演奏前に炭火で温めるのも特徴である。篳篥と龍笛はいずれも単音の旋律楽器、琵琶は撥で弾く弦楽器で管楽器ではない。形状や奏法、合奏内での役割から該当するのは笙のみである。
まとめ
いかがでしたか? 今回は雅楽演奏クイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回は雅楽演奏クイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。