アイスクライミングは、技術と体力に加え、装備や環境への適応力が勝負を分ける過酷なスポーツです。クランポンやアイスアックスを使い、凍った滝や氷壁を登る様は圧巻の一言。このクイズでは、リーシュレスクライミングの主な装備からアイススクリューの設置角度、氷質と温度の関係まで、アイスクライミングの基礎知識を問います。アイスクラフトマスターを目指す人も、趣味でクライミングを楽しむ人も、この10問で自分のスキルを確認してみてはいかがでしょうか。
Q1 : ミックスクライミングのグレードで表記される「M8」や「M10」の数字が示す主な内容はどれか?
ミックスグレードの記号Mはロックとアイスを交互に登るルートの技術難易度を示し、続く数字が大きいほど手数の多いオーバーハングや屋根をアックスで越える高度なムーブが要求される。M1は容易で歩く程度、M5で垂直に近付き、M8以上では足掛かりが乏しく長いトルクムーブを強いられる。数字はあくまで技術的困難度であり、高度や氷厚、必要ギア量を示すわけではない。したがって正しくは技術的困難度を示す。
Q2 : 氷瀑で懸垂下降用支点として広く使われる「Vスレッド」を作る際、氷中に形成される穴の形はどの文字に似ているか?
アバラコフ、通称Vスレッドアンカーはアイススクリューで氷に二つの穴を斜めに交差させ、内部で合流させてスリングを通す支点である。二つの穴が交差して作られた空洞を横から見るとアルファベットのV字形になるためこの名が付いた。十分な氷の厚さと良質な氷質があれば5〜7kN前後の強度が得られ、懸垂下降やビレイ支点として信頼できる。O字やX字では作成が困難だったり強度が低下するため一般的に用いられない。
Q3 : 一般にクライマブルな安定した水氷が形成されやすい外気温の目安はどれか?
水が流れながら凍って形成される滝氷は、外気温が-5℃から-10℃程度のときに最も結晶が締まり、クランポンやアックスが適度に刺さる良質な氷になる。0℃付近では表面が融けてビシャビシャになり、ビレイ点も抜けやすい。逆に-20℃以下では氷がガラス状に硬化し、ピックを弾き返しやすくスクリューのネジ山も噛みにくい。ガイドは天気図と現地温度を確認し、この温度帯に収まるかでツアー催行を判断することが多い。
Q4 : アイススクリューを氷壁に設置する際、強度を最大化する基本姿勢として推奨されるスクリューの角度はどれか?
各種実験では、スクリューを氷面とほぼ水平、もしくはハンガーがわずかに下を向く程度で設置した場合に最大強度が得られることが示されている。荷重方向とスクリュー軸が直交しにくく、氷に均等に力が分散するためだ。斜め下向きに深く刺すとネックに曲げモーメントがかかり破断しやすく、斜め上向きでは抜け方向と同調してしまう。したがって基本は水平、微下向きが国際的な推奨角度である。
Q5 : 氷壁での長時間活動で凍傷を防ぐために推奨される食物・飲料摂取方法として最も適切なのはどれか?
低温下では基礎代謝が上がり、登攀による燃料消費も増える。血糖が下がると末梢血流が減少し、指先や足先が凍傷に陥りやすい。温かいスープや甘味のある飲料、チョコレートやジェルなどを30〜60分ごとに摂れば体温維持とエネルギー補給を同時に行える。冷水の一気飲みは体温を奪い、カフェインのみの摂取は利尿作用で脱水を招く。空腹状態での長時間登攀も血流を悪化させるため最も不適切である。
Q6 : 世界的に有名なアイスクライミングエリア「Ouray Ice Park」が位置する州はどこか?
Ouray Ice Parkはアメリカ合衆国コロラド州南西部のサンフアン山地に位置し、ウーレイの町を流れるUncompahgre川の渓谷を利用して作られた人工氷の公園だ。冬季に取水パイプで水を撒き続けて約150本のルートを生成し、歩行でアプローチできる利便性から“クライマーのディズニーランド”とも呼ばれる。毎年一月のOuray Ice Festivalには世界中のトップクライマーが集い、大会やギア試乗、講習会が開かれる。他州にも名所はあるが、Ourayはコロラドにしかない。
Q7 : UIAAアイスクライミングワールドカップで行われる2種目はリードと何か?
UIAAが主催するアイスクライミングワールドカップでは、設定された難ルートをどこまで登れるか競うリード種目と、左右対称の人工氷壁を同時スタートで一気に駆け上がるスピード種目の2本立てでシリーズ戦が行われる。スピードでは選手は安全確保ロープの自動確保器につながれ、手足の素早い連携と反復ムーブが勝負を決める。ボルダリングやコンバインドは岩登り系大会の公式種目であり、スケルターという競技そのものが存在しないため誤りとなる。
Q8 : アイスクライミングで近年主流となっている「リーシュレス」スタイルで使われる主な装備はどれか?
リーシュレスはリーシュ(手首のストラップ)を使わずにアックスを持ち替える現代的なクライミング方法で、専用にデザインされたハンドル付きテクニカルアイスアックスが必須となる。グリップが大きく曲がり、ピックの形状が垂直氷を捉えやすいよう最適化されているため、素早い持ち替えとトルクムーブが可能になる。また、リーシュがないぶんフォール時にアックスを落とす可能性があるので、補助的にリストリーシュを付ける場合もあるが、基本的には握力とテクニックで保持するのが主流である。ウォーキングアックスは雪稜用、スノーショベルやポールは登攀用途ではない。
Q9 : アイス用クランポンの前爪が1本だけ突き出した形状を指す言葉は?
モノポイントクランポンは前爪が一本なので、氷の微細なポケットや岩のクラックに正確に立ち込みやすく、足首のロールもさせやすいのが特徴だ。垂直氷やミックスルートで威力を発揮し、極小ホールドで荷重を集中できる。デュアルポイントは二本爪で安定性が高いものの狭い縦リスには入りにくい。フラットフレームは古い平爪型の総称で形状を示す語ではなく、セミオートはバインディング方式を指す。よって正解はモノポイントである。
Q10 : 氷瀑の難易度を示す記号「WI」は何の略称か?
氷瀑のグレーディングではWI1〜WI7などと表記されるが、このWIはWater Iceの略で、流水が凍ってできた滝や氷柱を対象とするグレードを示す。氷河や雪氷壁を登るAI(Alpine Ice)とは区別される。数字が上がるほど傾斜が強く連続し、アイススクリューの設置や休憩ポイントも難しくなる。Water Iceという区別を理解していれば、どのグレード体系を参考にすべきかが明確になり、適切な装備選定やリスク評価につながる。
まとめ
いかがでしたか? 今回はアイスクライミングクイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回はアイスクライミングクイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。