セーリングの醍醐味を余すことなく味わえるよう、クイズを通して帆走の基礎知識を楽しく学んでいただきます。風に対する帆走角の最適化、セールトリム、リグ調整、レーシングルール、安全装備など、初心者から上級者まで幅広い層に向けた内容を厳選しました。クイズに正解すれば、実践で役立つ知識がさらに深まるはずです。セーリングの魅力を探求する上で、この記事が一助となれば幸いです。
Q1 : スターボードタックの艇とポートタックの艇がクローズホールドで接近した。レーシングルールでは避ける義務があるのはどちらか?
レーシングルールオブセーリング(RRS)第10条は異なるタックの場合、スターボードタック(右舷から風を受ける艇)が保持船となり、ポートタックの艇が避航義務を負うと定める。したがってポートで接近する艇は速やかに転舵または減速して衝突を避けなければならない。レイラインや風上・風下の優先は同一タック内での規則第11条に関わる事柄で、本ケースでは適用されない。規則違反による接触は失格や損害賠償の原因となるため、早期のコールと明確な進路変更で安全マージンを確保することが重要である。
Q2 : ディンギーでセール上部のパワーを逃がすため、ブームを下方に引きリーチテンションを調整する装置はどれか?
バング(キッカー)はマスト下部とブーム中間を結び、ブームを下げることでセールのリーチテンションとトルクを制御する装置。強風では引き込んで上部ローチを回し、パワーを逃がしてヒールを抑える。微風では緩めてルーズフット気味にしドラフトを深くして揚力を確保する。アウトホールはフット方向、トラベラーはシートアングル、カニンガムはラフ方向のテンション調整で目的が異なる。バングはダウンウインドでブームの上下動を抑え、スパーやセールの衝撃を防ぐ役割も持ち、艇のサイズを問わず重要なトリムツールである。
Q3 : ISO規格で150Nカテゴリに分類される救命胴衣の浮力はおおよそ何kgfに相当するか?
ニュートンとキログラム重の換算は1N≒0.102kgfである。150Nライフジャケットは150×0.102=15.3kgf、すなわち約15kgfの浮力を発生させる。成人を顔上げの仰向け姿勢で浮かせる最低限の浮力として設計され、外洋航海向けのISO12402-3基準を満たす。人体の比重はほぼ1だが衣類や装備で沈む危険があるため、この数値が下限とされる。浮力が不足すると呼吸困難や低体温症のリスクが高まるため、装備選択や荷物追加による浮力低下を数値で把握することは安全計画上極めて重要である。
Q4 : 意図しないジャイブを防ぐ目的でブーム後端と船首寄りのクリートを結んでブームを固定するロープの名称はどれか?
プリベンターは不意のジャイブによるブームの振り込みを防ぐため、ブーム後端から船首寄りの頑丈なクリートやビットにロープを取りブームを固定する装置またはそのロープを指す。追い風や荒天で横揺れする状況では、無人ジャイブが発生するとブームが反対舷へ高速で移動し、セールやリギンの破損や乗員の重傷事故につながる。ガイはスピンポール保持、ジッファーラインはスピンバッグの口留め、トラベラーはメインシートの横移動装置で用途が異なる。プリベンターを適切に設置すれば安全に長時間ランニングができ、乗員は安心して作業や休息に集中できる。
Q5 : 風に対して最も鋭い角度で帆走するポイント・オブ・セイルはどれか?
クローズホールドは風に対して最も鋭い角度で走る帆走角で、進行方向は風上30~45度程度とされる。セールは限界まで引き込み、リフトとドラフトを最適化して揚力を発生させる。ビームリーチは横風、ブロードリーチは後ろ斜め、ランニングは真追い風で、クローズよりパワーは得やすいが上り角は取れない。クローズホールドではヒールが大きくなるためセイルトリムとクルーワークで艇をフラットに保つことがスピード維持につながる。舵を切り過ぎると失速するので、シートワークで風位を調整しながら微速の揚力を保ち続けるのが基本テクニックである。
Q6 : メインセールのフットテンションを調整しドラフトを浅くしたり深くしたりするブームエンドの装置はどれか?
アウトホールはメインセールのクリューとブームエンドを結ぶ調整ロープまたはカム機構で、フットのテンションを変えることでドラフト(セールカーブ)の深さと位置をコントロールする。軽風時は緩めてドラフトを深くし揚力を稼ぎ、強風時は引いて平坦にしてパワーを減らす。カニンガムはラフ側のテンション、バングはブームを下げてリーチを抑え、トラベラーはシートアングルを変える装置で役割が異なる。アウトホールを適切に使えば、艇速の微調整やオーバーパワー回避に大きな効果があり、レースでもクルージングでも重要なセッティングツールである。
Q7 : マストを後方へ倒して上層セールのカーブやウェザーヘルを調整する装置はどれか?
バックステイはマストトップまたはセミトップから船尾へ引かれたステイで、テンションを変えるとマストが後方に撓り、セールの上部ドラフトを浅くして前方へ移動させる。強風時にはパワーを逃がしヒールとウェザーヘルを軽減、微風時は緩めてマストを真っ直ぐにし推進力を稼ぐ。ジブハリヤードやカニンガムはラフ側のテンション、キッカーはブーム下方の力、アウトリガーはスピンポール支持装置で、バックステイとは目的が異なる。マストベンドとフォアステイテンションを同時に変化させるため、微妙な風質変化への対応に欠かせない調整手段である。
Q8 : 国際航海中に帆船と機帆船が横切る形で接近した。通常、優先権を持つのはどちらか?
国際海上衝突予防法では帆走艇(帆のみで推進する船)が機帆船(動力航行船)に対して一般に優先権を持つ。両船が横切り状態になり衝突の危険がある場合、原則として機帆船が避航船、帆船が保持船となる。狭水路や制限船など特例がなければこのルールが適用される。艇の大小やスターン・バウの位置関係は優先権に影響しない。進路保持船であっても安全確保のため最後まで警戒義務は残るが、基本的には帆船が優先であるため、機帆船は早期に減速・転舵を行い衝突を避けなければならない。
Q9 : 国際信号旗で「船に医師が必要」を意味する単一旗はどれか?
国際信号旗の“W”は「医師が欲しい、医療支援が必要」を示す。急病人や重傷者が出た際に掲揚し、近隣船舶や沿岸当局に医療サポートを要請するサインとなる。“Q”は「検疫を要請する」または「本船は健康で入港許可を求む」。“O”は「人員転落中」。“N”は単独では「否」を示し、他旗との組合せで「助けが必要」などになる。正しい旗を掲げなければ誤った対応を招くため、各信号の意味を正確に把握しておくことが外洋航海の安全管理に直結する。
Q10 : 微風時にジブのドラフトを前方に保ち揚力を最大化するために最も有効な調整はどれか?
軽風下ではドラフトを前方に保ちジブをふっくらさせることで揚力を稼げる。そのためにはフォアステイテンションを緩め、ステイがわずかに弛むことでジブラフが曲がりドラフトが前方へ移動する設定が効果的である。シートを強く引くとリーチが閉じ抗力が増し失速を招く。フラッピングは視認用だが続けると速度低下する。バングはメインリーチ調整でジブには直接作用しない。フォアステイ管理は微妙で緩め過ぎればリフト角が増して失速するため、ハリヤードやリグ全体のテンションを合わせて調整する必要がある。
まとめ
いかがでしたか? 今回はセーリングクイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回はセーリングクイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。