過失責任主義と無過失責任の違いを問うクイズを通して、法的責任の成立要件や制度趣旨を学ぶことができます。損害発生の際に加害者の主観的な非難可能性が必要とされる過失責任主義と、危険領域の支配者に無条件の賠償義務を課す無過失責任の制度設計の違いを理解することで、被害者救済と社会的リスク管理のバランスが図られる法理論の全体像を把握できるでしょう。本クイズは、損害賠償法の基本原則を深く学ぶ良い機会となります。
Q1 : 無過失責任が拡大することの潜在的な問題点として正しいものはどれか。
無過失責任が広範に拡大すると、企業や個人が将来負担し得る損害額を過大に恐れ、本来社会的に有益な活動やイノベーションを控える「萎縮効果」が生じる危険があります。リスクの過度な内部化は投資や技術革新を阻害し、社会全体の厚生を低下させる可能性があるため、立法者は被害者救済と経済活動活性化のバランスを慎重に検討する必要があります。これが無過失責任拡大の潜在的問題点とされています。
Q2 : 無過失責任制度が導入される政策的な目的として最も適切なものはどれか。
無過失責任は、産業化に伴い高度な危険が大量に流通する社会で、被害者が加害者の過失を立証することが困難な場合に救済の確実性を高めるため導入されました。リスクを事故発生源に集中させ費用を内部化することで、安全投資を促し被害軽減を図る政策的狙いがあります。裁判所の負担軽減や制裁強化のみを目的とするものではなく、被害者保護と危険管理を結びつける制度設計です。
Q3 : 民法718条(動物占有者責任)に関して、責任を免れるために占有者が立証すべき事由として正しいものはどれか。
民法718条は動物の占有者等に無過失責任を課しつつ、「動物の種類および性質に従い相当の注意をして管理した」と立証できれば免責を認めています。占有者は飼育施設の整備やリードの装着など客観的に妥当な管理措置を尽くしていたかを証明しなければなりません。被害者の過失や予見可能性の欠如のみでは足りず、過失責任とは異なる形で注意義務の履行を示す必要があります。
Q4 : 過失責任と無過失責任のいずれにおいても共通に要求される要件はどれか。
過失責任でも無過失責任でも、不法行為が成立するには①違法な行為又は状態、②損害の発生、③その損害と行為又は状態との因果関係という客観的要件が共通します。無過失責任では主観的要素は不要ですが、因果関係の立証は被害者が担うのが原則で、これを欠けばどちらの責任も成立しません。従って両者に共通する中心的要件は因果関係です。
Q5 : 自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任で、運行供用者が免責されるために立証しなければならない要件に含まれないものはどれか。
自賠法3条の免責は「運行供用者または運転者が注意義務違反をしていない」「被害者または第三者の過失がある」「自動車に構造上の欠陥や機能不全がない」の三要件をすべて証明した場合にのみ認められます。任意保険への加入は被害者救済に役立つものの免責要件ではありません。したがって選択肢2は免責に必要な立証事項に含まれず誤りとなります。
Q6 : 民法717条(工作物責任)の性質についての説明として正しいものはどれか。
民法717条は土地の工作物の設置・保存に瑕疵がある場合、所有者または占有者に過失を要せず賠償責任を課す無過失責任規定です。もっとも所有者は過失なく責任を負う代償として、工作物の設置保存に過失がある施工業者等へ求償できるとされています。不可抗力の場合は免責され得るため絶対責任ではありません。したがって選択肢3が正しい説明です。
Q7 : 製造物責任法における製造業者の責任の性質として最も適切なものはどれか。
製造物責任法は欠陥商品による人身・財産被害について製造業者等に無過失責任を課す特別法です。被害者は製品に欠陥があり、その欠陥と損害との因果関係を主張立証すれば足り、製造業者の過失を示す必要はありません。一方、製造業者は当時の科学技術水準では欠陥を回避できなかったなどの抗弁で免責を主張できます。よって選択肢4が正解となります。
Q8 : 過失責任主義が伝統的に採用されてきた主な理由として適切なものはどれか。
過失責任主義は近代自由主義国家で確立した原則で、個人の自由な活動を尊重しつつ社会の安全を確保するため「非難に値する主観的帰責事由」がある場合にのみ法的責任を認める考え方です。行為者が予見可能な危険を回避し得たのに回避しなかったという注意義務違反がない限り、損害が発生しても賠償義務を課さないことで、自由と安全の均衡を図っています。
Q9 : 過失責任主義では、損害賠償責任が成立するために必要となる主要な要件はどれか。
過失責任主義は民法709条の一般不法行為責任の基本原理で、違法な結果が生じただけでは足りず、行為者が結果を避けるために必要な注意を怠ったという注意義務違反(過失)が存在することが必要です。この主観的非難可能性が認められなければ、危険な物の存在や被害者の無過失が立証されても賠償義務は発生しません。従って核心要件は「過失の存在」です。
Q10 : 無過失責任が採用されている代表的な法律の組み合わせとして正しいものはどれか。
自賠法3条と民法717条前段は、ともに行為者の過失を要件とせず一定の危険状態や瑕疵の存在だけで責任を認める代表的な無過失責任規定です。前者は自動車という高い危険源を社会に提供する者に、後者は土地工作物を管理する者に対して、被害者が過失を証明しなくても救済を図ることを目的としています。民法715条(使用者責任)は過失推定型で無過失責任ではありません。
まとめ
いかがでしたか? 今回は過失責任と無過失責任の違いクイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回は過失責任と無過失責任の違いクイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。