時効は、一定期間の経過により権利行使を制限し又は権利を取得させることで、紛争を蒸し返さないようにし社会秩序を維持する重要な制度です。長期間放置された請求は証拠が散逸し真実の解明が困難になるため、早期に法律関係を確定させることが公共の利益に資します。同時に現在の所有者や占有者を保護し取引の安全を図る点にも重きが置かれています。この記事では、時効制度に関するクイズを10問ご紹介します。時効に関する様々な知識を深めていただければと思います。
Q1 : 刑事訴訟法で公訴時効の進行が停止する事由として正しいものはどれか
刑事訴訟法では被疑者が国外にいる期間は公訴時効が進行しないと定める。国外逃亡で時効が完成すれば処罰を免れるという不公平を防ぐためである。被害者との示談や不起訴処分は時効の進行を止めない。また犯人不詳も同様で誰かが国外にいると確認できなければ時効は進む。したがって海外逃亡の事実が確認されて初めてその期間が時効計算から除外される。
Q2 : 時効が完成した後に債務者が弁済した場合(錯誤などがない場合)の扱いとして正しいものはどれか
時効完成後に債務者が任意に弁済した場合民法は債務の不存在を知っていても弁済の返還を求められないと規定する。これは時効が債務者の利益を保護するための権利であり放棄できるという観念に基づく。時効完成により自然債務となるが弁済は道義的義務の履行として有効であり不当利得返還請求の対象とならない。錯誤や詐欺があれば別だが通常は取り戻せない。
Q3 : 2020年改正民法で、権利を行使できることを知った時から進行する債権の消滅時効期間は原則何年か
改正前の民法では債権の種類ごとに1年から10年まで多様な短期消滅時効が定められていたが2020年施行の改正で大幅に整理され原則が①権利を行使できると知った時から5年②行使できる時から10年となった。本問は主観的起算点に基づく期間を問うもので答えは5年である。これにより債権者は5年以内の権利行使が求められる。
Q4 : 2010年の刑法改正により殺人罪など死刑に相当する犯罪について公訴時効はどうなったか
殺人罪や強盗殺人など死刑に相当する重大犯罪については社会的影響の大きさや被害回復の困難さを踏まえ2010年の刑事訴訟法改正で公訴時効が撤廃された。従来は25年だったが改正後は『時効なし』となり犯行から何年経過しても検察は起訴できる。DNA鑑定など科学捜査の発達によって長期間経過後も立証が可能となったことも背景にある。
Q5 : 民法において「時効の援用」とは何を意味するか
時効の援用とは時効期間が満了した後に当事者がその効果の発生を主張する意思表示をいう。債務の消滅時効であれば債務者が援用することで義務を免れる。援用は裁判外でも明示に行えば足りるが黙示では原則認められない。援用がなければ裁判所は職権で時効完成を認定できず権利は存続する点が重要である。したがって援用は時効効果の発生要件となる。
Q6 : 2020年改正民法において、時効の完成猶予又は更新事由に含まれないものはどれか
改正民法は時効制度を完成猶予と更新に再編した。裁判上の請求や強制執行に類する差押え仮差押え仮処分は時効の完成を一時停止しさらに6か月延長する効果を持つ。債務者による承認は時効を更新させゼロから再スタートさせる。他方で単に内容証明郵便で請求書を送るだけでは裁判上の請求に当たらず時効完成猶予事由にはならない。
Q7 : 民法上、時効が更新(旧法の中断)した場合の効果として正しいものはどれか
旧法では時効中断と呼ばれた制度は改正民法で『更新』に名称が変わった。更新が生じるとそれまで進行していた時効期間は一旦消滅し効果として新しい期間が最初から走り出す。たとえば10年の消滅時効が5年経過した時点で裁判上の請求をすれば期間はリセットされ再度10年を数え直す。したがって期間が半減や延長にとどまるのではなくゼロから計算し直す点が特徴である。
Q8 : 取得時効が成立するための要件として誤っているものはどれか
取得時効は他人の物を一定期間平穏公然に占有した場合に所有権を取得させる制度で長期の占有を保護し権利帰属を安定させる趣旨を持つ。要件は①自己のためにする意思での占有②平穏かつ公然の占有③法律で定める占有期間の経過であり登記の有無は成立要件ではない。もっとも不動産の場合は取得後に登記を備えなければ第三者に対抗できないが成立自体には不要である。
Q9 : 善意かつ無過失の占有者が不動産の所有権を取得時効により取得するために必要な占有期間は何年か
不動産の取得時効期間は占有者の主観的状態によって異なり善意無過失すなわち正当な権原があると信じ落ち度もない場合は10年で成立する。悪意又は過失がある占有者は20年必要となる。改正民法でも期間区分は維持された。善意無過失占有者は権利取得の期待が強く保護に値するから短期とされ、正当性に疑問がある者にはより長期の占有継続を要求する点が制度趣旨である。
Q10 : 時効制度の主たる目的として最も適切なものはどれか
時効は一定期間の経過により権利行使を制限し又は権利を取得させることで紛争を蒸し返さないようにし社会秩序を維持する制度である。長期間放置された請求は証拠が散逸し真実の解明が困難になるため早期に法律関係を確定させることが公共の利益に資する。同時に現在の所有者や占有者を保護し取引の安全を図る点に重きが置かれている。
まとめ
いかがでしたか? 今回は時効とは何かクイズをお送りしました。
皆さんは何問正解できましたか?
今回は時効とは何かクイズを出題しました。
ぜひ、ほかのクイズにも挑戦してみてください!
次回のクイズもお楽しみに。